2024年11月22日(金)

仕事の失敗を実力に変えるメンタルトレーニング講座

2018年1月20日

 このように、トレーニングから準備された集中力を高める一連の動作手順を、パフォーマンス・ルーティーンと呼びます。イチロー選手のバッターボックスでの独特な動作や、元横綱朝青龍関の独特な土俵作法なども、このパフォーマンス・ルーティーンだと考えられます。

 さて、皆さんはオフィスへ到着してから仕事を始めるまで、何をしていますか?

 自分自身の作業開始までの流れを確認すると、パフォーマンス・ルーティーンを確立していくことができるはずです。作業に取り掛かるまでに時間がかかってしまうという方は、ぜひ一度自分の行動を確認してみてください。そして、集中できるきっかけを見つけてください。たとえば、机の上をさっと片付けて「やるぞ」と声を出すなど。自分に合ったパフォーマンス・ルーティーンが見つかったら、それを毎日続けることが大切です。

「アテンション」で的を絞り込む

 アテンション(注意する、注意力)は、もともとアテンド(attend)という動詞であり、語源はラテン語の「~へ向ける」という意味の言葉ですが、これにtion(動作)を表す形が加わりattentionとなりました。

 一流選手たちは、トレーニングの時から試合中に起こるさまざまな現象を常に分析し、試合でも自然に対処できるよう、この注意力を高め、切り替え、操れるようにトレーニングしています。これは心のスポットライトが当たるべきところに当たるよう、準備をしているということです(スポットライトについては前回お話ししています)。

 たとえば、イチロー選手はバッターボックスで、クリスチアーノ・ロナウド選手はフリーキック直前で、朝青龍関は土俵の上で、毎回見る場所や物を決めています。イチロー選手は最終的にピッチャーとバットのみで、観衆や地面やユニフォームなどへは、一瞬たりとも視線を移しません。注意を逸らされないように工夫することで、自分自身の集中を高めているのです。

 これをアイ・コントロール法と呼びます。視線をコントロールすることによって、持続的な集中や切り替え能力を高める手法です。あらかじめ見る場所を決めておき、それ以外の情報刺激を遮断することで、自身の注意力を操っているのです。これもまた、普段のトレーニングから意識して実践し、積み上げてきた賜物だからこそ、ここ一番という局面で活かすことができるのです。

 集中を阻害する心配事や疲れ、悩み…。これらは結局、自分自身がつくり出した悪い「集中の的」です。

 これらを理解しておくと、一流選手のように、自分自身で的を絞り込む準備をすることが集中力をつけるトレーニングとなり、日常生活やビジネスの現場でも大いに活用していくことができます。今日すべき仕事の優先順位をパッと決め、それを書いて確認できるところに貼る、ストレッチをして気持ちを切り替える、視覚の片隅で動くものをなくして集中しやすい環境をつくる、などを実践して集中力を高める習慣をつけてください。仕事の効率が上がるはずです。

(編集・鮎川京子)

  
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