世界のエネルギー市場で最も重要な地位を占めているのは石油である。2000年代(00~07年)の世界の石油需要は、「爆飲」と呼ばれた中国の旺盛な需要などにより年平均日量1・3百万バレル(Mb/d)ずつ増加しており、「ピークオイル論」(石油供給ピーク論)が大きく取り上げられていた。需給ひっ迫に加え、金融市場での過剰流動性なども相まって原油価格が高騰し、供給ピークへの懸念がいっそう強調される形となった。
日本エネルギー経済研究所作成の『IEEJアウトルック 2018』における、政策やライフスタイルなどが今後もこれまでの趨勢(すうせい)に沿って変化してゆく「レファレンスシナリオ」では、世界の石油需要は15年の90Mb/dから50年には122Mb/dまで増加する。
地域別には、省エネルギーや再生可能エネルギーの普及などにより、OECD諸国が9Mb/d減少する一方で、インド(10Mb/d増)、ASEAN(6Mb/d増)、中国(5Mb/d増)などを中心とする非OECDアジアで大きく増加する。用途別では、増分32Mb/dのうち自動車用が9Mb/dを占める。
しかし石油供給ピーク論は、シェール革命などによりその後は影を潜めた。代わって登場したのが、石油の需要が資源制約に達する前にピークを迎えるという「石油需要ピーク論」である。気候変動対策による省エネ促進・再エネシフトの強化が、石油の消費を抑制するという見方に端を発している。
さらに、従来型ガソリン・軽油自動車から電気自動車(EV)などへの移行を目指す動きが、大気汚染対策を背景に昨今特に活発化していることも、この見立てへの注目度を高めている。昨年、フランスと英国の政府が40年までに従来型自動車の販売を禁止すると発表したように自動車電動化の動きがヨーロッパで先行しているが、その40年には世界の自動車販売市場の約3割を占めるようになる中国、インドでも同様の兆しが出ている。