2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月25日

 英エコノミスト誌の解説記事(電子版12月19日掲載)が、中国がインドの勢力圏に当たる小国を取り込みインドに圧力をかけている様子を描写し、インドが勢力圏を維持するのは容易でない、と指摘しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/IconicBestiary/Anna_zabella/Ecelop)

 中国の王毅外相は、中国は国際問題において「勢力圏」を認めない、と言った。それはインドの勢力圏維持を認めない意がある。

 インドは、宿敵パキスタンを別にすれば、周辺の小国に対し容易に優位に立ってきたが、最近、中国はますます大胆に前進し、インドの支配に挑戦している。

 12月9日には、スリランカは南岸の戦略的港湾を中国政府が支配する企業に99年リースする契約を認めた。ネパールでは2つの共産主義政党の連合が議会選挙で地滑り的勝利を収めた。両党は、対中関係を強化し、インドと距離をとるとしている。11月末には、モルディヴは、野党欠席の緊急集会を経て、中国との自由貿易協定を批准した(南アジアではパキスタンに続き2番目)。同国は島の一つを中国の企業にリースし、大規模なインフラ計画を認めている。2014年の習近平による中国国家主席として初の同国訪問後、軍、外交、経済関係は急速に強化された。

 ネパールでも、中国は急速に浸透している。共和国となったネパールは、2015年に新憲法を制定した。インドは同憲法を国境沿いの低地に対し不公平とみて、再び強硬姿勢を見せた。しかし、ネパール政府は経済封鎖に屈せず、一歩も後退しなかった。ネパールは、独立を主張するため、中国とのいくつかの取引に署名した。最近の選挙で、この政策はネパールの共産党に優位に働いた

 ネパールのインドとの関係は、経済面でも軍事面でも依然として強い。しかし、中国は、ジャーナリストや学術界に熱心に資金供与し、対抗してきた。

 インドは中国の圧力に狼狽させられるが、押し戻すこともある。昨年夏、インド軍は、中国軍による道路建設を阻止すべく、ブータンが領有権を主張する地域(注:ドクラム高原)に進入。その介入が中国を止めた。ヒマラヤをめぐる特異な競争では、インドは力ではないにせよ決意では中国に太刀打ちできるかもしれない。

 しかし、インドの「勢力圏」を維持するのは容易ではない。インド経済は中国の5分の1で、インドの雑然とした民主主義は政策決定を遅く面倒なものにしている。さらに、インドは組織的制約に悩まされている。例えば、専門の外交官は、米国の1万3500人に対し、770人しかいない。インドの近隣国への援助は、公共企業を通じた効率の悪いものである。そして、最近まで、インドは、同様に中国の拡張を懸念する他の国々との協働を避けてきた。しかし、これらすべては変わりつつある。インドが屈するとは考え難い。

出典:‘India faces growing competition with China in its own backyard’(Economist, December 19, 2017)
https://www.economist.com/news/asia/21732851-maldives-nepal-and-sri-lanka-are-no-longer-meek-they-used-be-india-faces-growing


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