日産自動車・SUBARU(スバル)の「無資格者検査問題」、神戸製鋼所による製品データ偽造など「メイド・イン・ジャパン」の信頼性を損なうような品質トラブルが相次いでいる。こうした企業の品質問題の背景には、規制と現状が一致していないこと、仕事のプロセスが合理的に見直されていないこともある。そしてそれが、日本の屋台骨である自動車産業の競争力を奪い始めている。
国土交通省は2017年11月21日、「適切な完成検査を確保するためのタスクフォース」を設立したと発表。日産・SUBARUの不正を受け、確実な完成検査の実施と不正の防止、同省の効果的なチェックのあり方を検討するためだ。同省審査・リコール課は「制度の必要性はあるとの認識の下、見直す点があるのか、メーカー側の意見も採り入れながら考えていきたい」(型式指定申請業務指導官の團村聡氏)と説明する。
この日産・SUBARU問題については、自動車業界からは「制度自体が古いので、現状の作業に合っていない」といった声も出ている。
有資格者による検査の内容は、1951年に制定された道路運送車両法に基づく通達(行政指導)「自動車型式実施要領」で定められ、違う通達などもまとめて現在の形となったのが98年だ。内容をみると、警音器の音の大きさや、亀裂や取り付けの緩みなどを確認するためのハンマーを用いた動力伝達装置の検査、窓ガラスの視認……といったもので、日本の自動車メーカーの製造能力が低く、品質トラブルが多かった時代の名残だ。
たとえばトヨタ自動車は57年、対米輸出1号として「クラウン」を米国で発売したが、品質力が伴わず、カリフォルニア州の坂道を登れなかったとの逸話が残るように、日本車の品質が悪かった時代があった。その後、日本車は品質が高まり、欧米メーカーから市場を奪った。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は80年代、日本車に駆逐され米国市場から撤退した。
現在、日本の自動車メーカーの工場では「自工程完結」という発想を進化させ、品質は各製造工程で造り込み、下流工程に不良品を流さないという大原則がある。このため、完成検査の段階で安全にかかわるような不具合が出ることはまずないという。現に日産でもSUBARUでも、今回の無資格者検査問題によって品質不良の車を消費者に売った事例は出ていない。ただ、国交省は「完成検査で不具合が見つかったケースはある」と反論する。