Wedge REPORT

2017年12月28日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。著書に『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。近著は『自動車会社が消える日』(文春新書)。

 欧州ではこうしたエンジニアリング会社が台頭。単に完成車メーカーの下請けではなく、頭脳集団として「相談相手」としての機能も持つ。リカルドも戦略コンサル事業を始めている。

 オーストリアのAVLも老舗エンジニアリング会社。開発設備とそのソフトウェア開発に強みを持ち、メーカーが作りたい車を開発するために、競合他社の車に機器を載せれば加速度など乗り心地をデジタルに解析する技術を得意としている。「良い製品を出すためには自前主義にこだわらないのが欧州の特徴」と、日本法人の岡田尚己社長は指摘する。

 こうした戦略的な分業も欧州の開発効率を高める要因の一つだ。そして、組織の壁を越えたネットワークづくりがその風土を作り、「ルールメイキング」にも影響している。

 ドイツには自動運転などに関するルールメイキングのため、OEM、サプライヤー、研究機関などが集まる「ペガサス」と呼ばれるコンソーシアムができている。VRも含めて、最新の開発手法が導入される自動運転の型式認証における評価方法を標準化していくための集まりで、欧州様式をデファクトスタンダードにする狙いがある。ここに国も補助金を投入している。

 また、独アーヘン工科大学を中心とした「アーヘンコロキューム」とウイーン工科大学が軸となる「ウイーンシンポジウム」も毎年開催され、産官学のトップ級人材が集まる。ここで最新技術に合わせた規制についても議論される。こうした会議では「各社が協調できる領域と競争領域がこれまでの経験から決まっており、協調領域については技術をブラックボックス化することなく議論が行われている」(自動車関連会社エンジニア)という。

 技術に追いついていないルールを嘆き、無視しても開発を前に進めることはできない。古いルールを無くすだけではなく、新たな自動車社会に向けて、協調領域を明確にし、共有すべき情報は共有して、官民一体で新たなルールづくりを行うべきだ。 

  
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◆Wedge2018年1月号より

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