火炎放射器を売るマスク
「馬鹿げて面白いことが好き」というマスクは、1月27日にボーリング社から500ドルの火炎放射器を売り出した。マスクは、火炎放射器を持ってはしゃぐ自分の動画をインスタグラムに投稿し(https://www.instagram.com/p/BeeYW0NA1HU/)販売を促進したが、その甲斐があってか2月1日マスクは2万台が完売したとツイートした。
マスクは「ゾンビが現れれば、火炎放射器を買っていて良かったと思うだろう。ゾンビに効果がなければ、返金する」「面白いことが好きでなければ、買わないほうがいい」とツイートしており、おもちゃの範疇と考えているようだ。法的には炎の長さが3メートル以下の火炎放射器は規制されないとも説明している。
面白いという理由で火炎放射器を売ることには、当然非難もある。カリフォルニア州議会議員は火炎放射器について次のようにフェイスブックに投稿している「これが本当のこととすれば、激しい怒りを覚える。あなた方もそうあるべきだ。もしこれが冗談だとすれば、歴史上最悪の森林火災シーズンが終わろうとしている時に、恐るべき無神経さだ」。
マスクが話題と資金を一緒に作る必要があるのは、不調が続いているテスラから目を逸らさせる狙いもあるのかもしれない。
苦悩が続くテスラ
2017年第4四半期のテスラ決算は、売り上げ32億8800万ドル、純利益は7億7100万ドルの赤字となった。年間では117億5900万ドルの売り上げ、22億4100万ドルの赤字だ。収益低迷の最大の原因は、量産車モデル3の立ち上がりの生産問題が解決できないことだ。アナリストの販売台数予想は平均5200台だったが、実際の販売は1542台に留まった。モデル3の週当たりの生産台数を5000台にする目標は2018年3月末から6月末まで再度3カ月延期された。
しかし、営業キャッシュフローが前期のマイナス3億100万ドルから5億1000万ドルに好転したことから、投資家は安心したようであり、決算発表により株価は上昇した。この営業キャッシュフロー好転の理由は、モデルXとSの在庫販売によるもので一時的なものだ。XとSの第4四半期の生産台数2万2137台に対し販売は2万8425台に達している。
赤字が続くテスラの財務内容は悪化している。例えば、12月末時点で流動負債は前年末の58億ドルから76億ドルに増加しているが、流動資産は前期末の63億ドルから僅かに増え66億ドルだ。流動比率は87%、健全な状態ではない。
テスラは増資、転換社債、ジャンクボンド(くず債権)と資金調達の多様化を図っているが、ジャンクボンドの価格は依然低迷しており、追加の発行は難しい状況だ。テスラは新しい資金調達手段として、車のリース債権に裏付けされた債券を2月に5億4600万ドル発行した。年利率は2.3%から5%、2020年償還の条件だ。
モデル3の生産次第では、キャッシュフローが苦しくなることも考えられるが、マスクは生産の問題は3月には解決すると述べ、3月末に週生産台数が2500、6月末に5000台に達し、4、5カ月でキャッシュフローがプラスになると述べている。マスクの計画は今度こそ実現するのだろうか。さらに生産が遅れるようであれば、資金面で余裕がなくなってきているテスラの苦悩は続くことになる。
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