2024年12月23日(月)

「犯罪機会論」で読み解くあの事件

2018年3月23日

 子どもを狙った誘拐のほとんどは、だまされて連れ去られたケースである。東京・埼玉連続児童殺人事件(宮崎勤事件)も、神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗事件)もそうだった。ほとんどの犯罪者は、強引に子どもの手を引いて連れ去ろうとはしない。無理やりの場合は、失敗すればただちに捕まるが、だましの場合は、失敗してもそれだけでは捕まらないからだ。

 したがって、子どもを被害者にしないために最も必要なのは、大声で叫んだり、走って逃げたりする練習ではなく、どうすればだまされないかを教え込むことである。

(BananaStock)

景色はウソをつかない

 人はウソをつくから、人を見ていては、子どもはだまされてしまう。だまされないためには、絶対にだまさないものを見るしかない。それは景色――人はウソをつくが、景色はウソをつかない。

 景色の中で安全と危険を識別する能力のことを「景色解読力」と呼んでいる。景色からのメッセージをキャッチできれば、危険を予測し、警戒レベルを上げられるので、だまされずに済む。防犯のために注視すべきなのは、人ではなく景色なのだ。

 松戸ベトナム女児殺害事件(リンちゃん殺害事件)のように、たとえ日ごろはやさしく親切な「知っている人」でも、「危険な景色」の中にいるときは、信用してはいけない。逆に、「知らない人」でも、「安全な景色」の中にいるときは、言葉を交わしたり、助けの手を差し伸べたりしてもいい。道徳教育で言われているように、「人は見かけで判断するな」を基本にしつつも、「人は景色で判断しろ」ということだ。

 では、どうすれば景色解読力を高めることができるのか。その簡単な方法が「地域安全マップづくり」だ。地域安全マップとは、犯罪が起こりやすい場所を風景写真を使って解説した地図である。だれでも楽しみながら「犯罪機会論」を学べるツールとして、2002年に私が考案した。

 犯罪機会論は、犯罪者の動機や性格には興味を持たない。犯罪者がどんな人だろうが、犯行パターンには共通点があり、その共通点を抽出することに興味を示す。その共通点を一言で表すと、犯罪者は景色を見て、そこが「入りやすく見えにくい場所」だと判断すれば犯行を始めるが、そこが「入りにくく見えやすい場所」だと判断すれば犯行をあきらめる、ということだ。


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