2024年11月22日(金)

「犯罪機会論」で読み解くあの事件

2018年3月23日

事前学習では「人から景色へ」と発想の転換を図り、防犯キーワードを教える

 「入りやすい場所」とは、だれもが簡単にターゲットに近づけて、そこから簡単に出られる場所である。そこなら、怪しまれずに近づくことができ、すぐに逃げることもできる。

 「見えにくい場所」とは、だれの目から見ても、そこでの様子をつかむことが難しい場所である。そこでは、余裕を持って犯行を準備することができ、犯行そのものも目撃されにくい。

 このように、地域安全マップは、(だれもが/犯人も)「入りやすい場所」と(だれからも/犯行が)「見えにくい場所」を洗い出したものなのである。

フィールドワークが最も重要に

 ここで注意してほしいのは、マップづくりとはいうものの、実際には能力の向上という「人づくり」であって、正確な地図の作製という「物づくり」ではない、ということだ。なぜなら、犯罪者は地図を見ながら犯行場所を探しているのではなく、景色を見ながら犯行を始めるかどうかを決めているからである。それは子どもたちにとっても同じこと。地図を見ながら学校や友達の家に行ったりはしていないが、景色はいつも見ている。つまり、安全と危険は、地図の中ではなく、景色の中で判断すべきものなのだ。

 このことから、地域安全マップづくりでは、景色を観察する街歩き(フィールドワーク)が最も重要になる。もちろん、街歩きの前には、必ず景色を解読するための「ものさし」を与えなければならない。それが「入りやすい」「見えにくい」という二つのキーワード。これを使って、フィールドワークでは、危険な「入りやすく見えにくい場所」と安全な「入りにくく見えやすい場所」を探して歩くのだ。

フィールドワークでは危険な場所と安全な場所をその理由を考えながら探す

 例えば、ガードレールが設置されていない道路は、車に乗った誘拐犯が歩道に「入りやすい場所」である。両側に高い塀が続く道路は、家の中から子どもの姿が「見えにくい場所」だ。

 フェンスで囲まれていない公園は、誘拐犯も「入りやすい場所」である。うっそうと茂る草木に囲まれた公園は、誘拐の一部始終が「見えにくい場所」だ。

 田畑に囲まれた道路や建物の屋上は、死角になる部分がないので一見安全そうに思えるが、周囲からの視線が届かないので、やはり「見えにくい場所」である。


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