人間関係を築くための性教育を
――最近でもその傾向は続いているのでしょうか。
染矢:近年だと、一部の自治体で同性パートナーシップが認められたり、LGBTに関する人権教育が広まる中で、セクシャリティに対する理解を深める教育という部分では、幅が広がってきていると思います。ただやっぱり、現場の先生でよっぽど思いが強い人や、理解のある管理職がいる学校とそうではない学校の差はあるようですね。
――染矢さんの講演の話を聞くと、90年代に自分が受けた「性教育」の内容とは全然違うので驚きます。私自身は当時の性教育が楽しかったという記憶がないので、そういうイメージを抱いたままの大人が多いと残念だなと思います。
染矢:世界的な流れとして、性教育は単に「妊娠や性感染などのリスクを防ぐための教育」ではなく、「広く人間関係を築いていくための包括的なセクシャリティ教育」に移行しています。
――『オトコの子の「性」』の中でも、最初に性に関することは大事なこと、性は幸せにつながることという説明があります。子どもを無暗に脅かしていない。
染矢:人生の中で「性」というカテゴリをハッピーにして言ってほしいなという思いを込めたというところはありますね。
子どもから夫婦の性生活について聞かれたら?
――保護者向けの講演では、どんな声がありますか?
染矢:「子どもから聞かれたときになんて答えたらいいかわからない」という声が多いです。「自分たちの性生活のことを聞かれたらすごく困るし……」と。
――どう回答するのでしょうか?
染矢:科学的な事実を淡々と伝えること、それから子どもの疑問を否定しないことが大事ですと答えています。子どもの疑問を否定してしまうと、性に対するタブー感につながり、もしトラブルがあっても大人に相談しづらくなってしまうし、子ども自身が否定されたと思ってしまうこともあります。
――両親の性的なこと、プライベートなことを聞かれたらどうしたらいいのでしょう。
染矢:自分のプライベートについては、答えたくないことは答えなくてもいいと言っています。「誰でもプライベートなことで話したくないことはあるよね。あなたも話したくないプライベートなことを聞かれたら答えなくていいんだよ」と伝えるといいと思います。
――他にはどんな質問がありますか?
染矢:お母さんから、子どもが胸や性器にタッチしてきて困ると相談されることがあります。幼少期のスキンシップは大切ですが、人前で触るとか痛い触り方をするような場合は「ダメだよ」と言わないといけません。