東京都足立区の区立中学校で行っていた性教育について、都議が内容を問題視し、区教委を指導する予定だと報じられている。区教委はこれに、「不適切だと思っていない」と反発しているという。
「寝た子を起こすな」つまり、子どもにわざわざ性的好奇心を喚起させるような情報を与えるなという意味で、性教育を必要ないと言う人がいる。一方で、ポルノ情報を与えれば、特に男子にとってはそれが性教育になると言う人がいる。どちらにも賛成できない。性知識をタブーにせずに教えることは、子どもがさまざまなリスクを回避しパートナーとの関係性を築くための一助となる。しかし大人向けのファンタジーであるポルノには誇張表現も多く、それだけでリアルな性知識を学べるとは言いがたい。
『オトコの子の「性」 思春期男子へ13のレッスン』(監修:村瀬幸浩、著:染矢明日香、漫画:みすこそ/合同出版)は、女子に比べて見過ごされがちな男子に対する性教育を扱った一冊だ。男女の体の違いや月経・射精の仕組みだけではなく、性器の悩みや自慰行為についての相談、SNSを使うときの注意点、性的好奇心とどのように向き合うべきかについてまで、漫画を用いながら説明されている。著者の染矢明日香さんは、豊かな人間関係を築くための性について考えるNPO法人ピルコンの理事長を務め、これまで中高生やその保護者向けの講演を行ってきた。染矢さんに、現代で求められる性教育や、その反応について聞いた。(取材日は2月16日)
NPO法人ピルコン理事長。自身の妊娠・中絶経験をきっかけに、慶應義塾大学在学中にピルコンを設立。「これからの世代が自分らしく生き、豊かな人間関係を築ける社会の実現」をビジョンに、民間企業に勤めながら2013年ピルコンをNPO法人化。医療従事者など専門家の協力を得ながら、大学生・若手社会人のボランティアと共に中高生向け、保護者向けの性教育・ライフプランニングを学ぶ講座やコンテンツの開発・普及、啓発イベントを行う。“人間と性”教育研究協議会東京サークル研究局長。
実は多い、男の子の性の悩み
――「男の子の性」に特化した書籍にした理由を教えてください。
染矢:女子の場合、月経の仕組みを中心に子ども向けの本はいろいろありますが、男の子向けは少なかったということがあります。特に、インターネットやSNSなど最近の話が反映されている、読みやすいかたちの本はなかなかなかったのかなと。インターネットやスマホの普及によって、男の子が接する性情報はより身近になった一方、過激なものも多い中で、きちんとした情報をわかりやすいかたちで伝えたいと思いました。
――子ども電話相談室を設けたところ、男の子からの性の悩みの相談が女の子よりも多かったという話を聞いたことがあります。
染矢:女の子の場合は友達と月経の話とかしますけど、男の子同士の場合、下ネタは話しても悩みや疑問についてなかなか話しづらいみたいですね。だから女の子以上に、男の子は性の悩みを抱え込みやすいのかな、と思います。