機械が愛おしい。
そのような声を聞いた。何を馬鹿な、大げさなと思ったが、じっくりと眺めていて、なるほど、言いたいことが分かってきた。
横浜工場ではシウマイのみを製造している。弁当用のシウマイは弁当工場へ送り、出荷に合わせて蒸し上げる
新横浜の日産スタジアムからほど近い、「崎陽軒〔きようけん〕」の横浜工場。その工場見学に行き、機械が挽肉などの食材を運び込み、混ぜ、形成し、蒸し……というプロセスを見ていて、そんな気分になった。
やっていることは人がやる料理、それと変わらない。そして、添加物や保存料などの人工的なものは加えていない、ごく常識的なシウマイ(シューマイの崎陽軒式表記)作りをしているのだ。だからこそ、けなげに働きつづける機械のラインが愛おしくも思われてくるのだ。不思議な親しみのようなものを感じてしまうのだ。
怪しげなブラックボックスであれば、このような感情がわいてくるかどうか。
機械の働きを堪能した後、出来上がったばかりの熱々を試食させてもらう。そして特別に、一旦冷ました、つまりはお馴染みの「シウマイ弁当」で、ふつうに買って食べる状態のものも同時に、試食させてもらう。
そうそう。これこれ。
食べ慣れたいつもの味。
三つ星レストランのように、特別に驚かせるような美味ではもちろんない。が、ほっとする滋味。まるで母親の料理のような納得、再確認の味。冷めても、温かいものと同じように美味しいシウマイ。
それを機械が一日に何十万個と作っている不思議。面白さ。この工場見学、人気があって平日でもなかなかに予約が難しいという噂は聞いていたが、それもなるほど、そうなのだろうと思う。さて、敷地内の店舗で買ったシウマイはお土産にするとして、シウマイ弁当の方は港に行って開けようか、列車の中にするか。