世界的な傾向として伸びつつあるオーガニック
2つ目のオーガニックも植物性たんぱく質と同じ流れです。持続可能性を考えれば当然のことといえるでしょう。
肥料、農薬、除草剤、殺虫剤などを使わないのはもちろん、さまざまな植物や生物が共生する生物多様性のなかで作物を育てるという意味でも、オーガニックの流れには大きな意味があるといえます。
それにしても、しなければならないと思ったら、それを生産者、流通業者、小売業者、消費者も実行に移すアメリカ人の行動力には目を見張るものがあります。以前、FNCEで開催されたベジタリアンに関するセッションに参加した際に、環境問題や動物保護に敏感な学生が大勢詰めかけていたことを思い出します。私たち日本人も地球人としてもう少し、外に意識を向ける必要があるのではないかと思わざるを得ません。
オーガニックの市場規模は年々拡大しています。農林水産省によると(※2)、有機食品の総売上額は欧州が3.1兆円、アメリカは3.2兆円。日本は約1300億円に過ぎません。日本でオーガニック市場が育たない要因としては、有機農協の耕地面積が圧倒的に少ないことに加えて、高い技術が必要なこと、販路の確保が困難なこと、一般のものに比べて割高なものが多いことなどが挙げられます。
FNCEの会期中、シカゴの高級スーパーを4軒ほど回ったのですが、オーガニックの野菜や果物、牛乳・乳製品、果汁飲料、スナック菓子、卵などはごく普通に並べられており、日本より低価格で販売されています。アメリカでこれだけ消費されていることを考えれば、日本でも健康志向の高い人たちや富裕層の間では、オーガニックを求める声がより高まるものと思われます。また、2020年の東京オリンピックに向けて、環境に対する日本の取り組みには世界から注目が集まります。国としても有機農業の栽培面積を現在の0.4%から1%にしようとしています。こうした動きもオーガニックの普及に拍車をかけることになるでしょう。
ところで、オーガニックという言葉はよく使われるものの、無農薬や低農薬など、さまざまな言葉が氾濫しており、何がオーガニックなのか、消費者に周知されているとは言い難いのではないでしょうか。
オーガニックは、日本では「有機JASマーク」がついた農産物というのが正確です。
日本では1999年にJAS法(農林物資の規格化等に関する法律)が改正され、有機農産物やその加工食品に関する日本農林規格がつくられました。それまで生産基準が統一されていなかった農産物等に基準ができたわけです。日本農林規格は、国際食品規格を作るコーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)に準拠しており、アメリカ、欧州、オーストラリアなどもコーデックスガイドラインに準拠していることから、これら海外の有機農産物と同等と認められています。日本で「有機野菜」「有機○○」「有機栽培」「オーガニック」と表示できるのは、有機JASマークが交付されたものだけです。