アメリカ食品業界の最近の傾向
今後の食と健康のトレンドをご紹介してきましたが、最後に、最近の展示会の傾向をお伝えしておきたいと思います。これはダイレクトにビジネスにも通じるものがあるはずです。
展示会場には、「Natural & organic」「Healthy Gut」「Technology for practice」「Wellness & Prevention」の4つ特設会場がありましたが、スペースも広く出展者が多かったのは、先にご紹介したナチュラルやオーガニックをうたった野菜や果物、スナック(軽食)、ジュース類などを展示した「Natural & organic」コーナーと、腸の健康に有用なヨーグルトやプロバイオティックス飲料、FODMAP含有量の少ない食品などを展示した「Healthy Gut」コーナーでした。
これらのなかでも特に目立ったのは、プロテイン飲料、オメガ3、グルテンフリーです。
プロテイン(たんぱく質)に関しては、牛肉に替わる植物性たんぱく質として、豆類をつぶしたペーストや生地に混ぜ込んだパスタ、グリンピースを使ったスナック菓子、マッシュルームをブレンドしたハンバンガーパテ、プロテイン飲料、あるいはたんぱく質の豊富な種実類(落花生、かぼちゃの種)などが数多く展示されていました。
あるメーカーの担当者は、アメリカ人の食生活でたんぱく質が不足しているというわけではなく、むしろ近年流行していた低脂肪、低炭水化物に替わる食事法という考え方が強いのではないか、と話していました。
このほか、グルテンフリー食品はすっかり定着しており、小麦粉に替わるとうもろこしやじゃがいも、キビ、キノア、米粉などを使ったパンやパスタ、クッキーなどが数多く展示されていました。しかし、どれもおいしくなく、日本製のグルテンフリー食品であれば海外の食品市場でも十分に戦えるのではないかと思います。
また、日本でもお馴染みのオメガ3脂肪酸については、オメガ6脂肪酸とのバランスが崩れると生活習慣病や認知症に影響することがさまざまな研究からわかってきたことから、オメガ3脂肪酸を多く含む魚油のサプリメントや亜麻仁、くるみなどを取り扱う企業・団体が盛んに宣伝をしていました。
少し横道にそれますが、食品パッケージに面白い傾向が見られました。これまで、アメリカでは、どちらかというと「〇〇強化」というように特定の栄養素や機能性を強化した食品がもてはやされてきました。しかし、なるべく自然なものが体によいという流れのなかで、アレルギーの元となるアレルゲンや、小麦に含まれるグルテン、糖類、穀物などを含まないことをあえて目立つように表示している「〇〇フリー」食品が目立つようになっていました。
以前、アメリカのスーパーでグルテンと関係のないヨーグルトに認証マークが付いているのを見た時には笑ってしまいましたが、ここしばらくは「〇〇フリー」表示が商品の選択に大きく影響するのではないでしょうか。
消費者もうかうかしてはいられません。ますます商品知識が必要になる時代になってきたことをお伝えしておきたいと思います。
※1 講演では、現段階では栄養ガイドラインは確率されていないものの、LGBTは摂食障害やダイエットピルの悪用に陥りやすいこと、医療従事者から差別を受けて医療サービスが受けられない経験を持つ人がいることなどがいくつかの調査で明らかになっているという調査も示され、LGBTの人たちが置かれているこのような背景を理解し、一人一人に寄り添うことが大切だと報告された。
※2 「オーガニック・エコ農業の拡大に向けて」農林水産省(平成28年2月)
※3 https://www.aboutibs.org/facts-about-ibs.html
(編集・鮎川京子)
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