2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月16日

 それからもう一つ、中朝が主張するのが、「段階的で同時的な措置」という解決方法である。少しずつ実験を暫く止めるから、制裁を緩和してほしい、という北朝鮮の言い分である。この場合、何を北朝鮮にさせて、どの程度制裁を緩和するかが重要である。単なる実験の中断ではなく、IAEAが査察に入り核施設の解体を進める。その上で、段階的に制裁を緩和していくことが求められよう。

 この点に関して、米朝首脳会談を迎えるにあたり、ゼーリック元米国務副長官が3月27日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙で、10項目の提案をしている。ゼーリックがUSTR代表の時に掲げた、中国に対する「ステイク・ホルダー論」は様々な解釈で賛否両論があったが、今回の10項目の提案は、どれも傾聴に値する。特に、3つ目の韓国、日本との同盟関係を重視し、在韓米軍の撤退等、北朝鮮の望む方向にもって行かないように注意している点はその通りだろう。また、9つ目に北朝鮮との交渉が決裂した場合に次の手を考えておくことや10項目目に、トランプ大統領は即断をしないように、との提案は大事なことだと思う。

 朝鮮半島をめぐる北東アジアの安全保障というのは、米国や日本はもとより中国やロシアという大国が絡む話であり、北朝鮮のみを相手にそう簡単に解決できるものではない。米朝首脳会談は、問題の終わりではなく、交渉の始まりにすぎない。

 今回の朝鮮半島の非核化に向けた楽観ムードの中で、注意しなければならないことがある。一つは、日米韓の連携が必要ということと同列に、米国は中国とロシアとも協調しなければならないと語られていることである。北朝鮮の後ろ盾となっている中国に動いてもらうことは必要であるが、中国が、北朝鮮の同盟国で、中朝友好協力相互援助条約を締結していることも忘れてはならない。

 トランプ大統領はイランと「P5+1」との核合意を、不十分であると批判している。イランが北朝鮮とも密接な関係にあることも考慮すれば、米朝首脳会談は厳しいものになるかもしれない。

 日本は、今月17日に安倍総理がトランプ大統領と首脳会談を行う。日米同盟の絆の上に、平昌オリンピックで安倍総理とペンス副大統領が歩調を合わせたことからも、核・ミサイル・拉致問題の包括的解決を含む朝鮮半島をめぐる北東アジアの将来の安全保障のために、実りある日米首脳会談になるだろう。

 日米国民に訴えるためには、北朝鮮で拘束され帰国後に死亡した米国人大学生オットー・ワームビアさんの遺族を日本に招き、拉致被害者家族と交流する機会ができればなお良いだろう。
 

  
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