2022年8月12日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月23日

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 ホワイトハウスで行われたトランプ大統領とバルト三国首脳との会談は、ロシアの脅威を念頭に行われたことは明らかである。ロシアの脅威に対抗するため、抑止力のために、米国とバルト諸国は、軍事的、経済的、社会的にも協力関係を強化することが確認された。

 上記に紹介した共同記者会見の冒頭での各国首脳の発言には、ロシアという言葉は出てこない。バルト諸国独立100周年の機会に、米国がそれを祝福し、関係を強化するという形がとられた。

 が、記者からの質問の中で、ロシアとの関係が提起された。トランプ大統領は、ロシアとの関係について、自分ほどロシアに対して厳しい交渉相手はない、と述べた。また、イギリスでの暗殺事件を受けて、NATO各国がロシアの外交官を召還する措置を取ったが、ドイツとフランスがそれぞれ4名なのに対し、米国は、60人の外交官の退去を決定したとトランプ大統領は強調した。

 バルト諸国の首脳らは、トランプ大統領の指導力に、大変期待しているようである。トランプ大統領は、記者会見でも述べているように、米国の国防予算を7千億ドル以上に決定し、久しぶりに大幅に増額した。バルト三国も、GDPの2%以上を国防費に充てていて、NATO内の優等生とされる。クリミア半島を併合したり、ウクライナの東部に侵略したり、また、中東では化学兵器を自国民に使用したアサド政権を支援しながら、国内では政敵を逮捕するなどの独裁色を強めるプーチン政権。そのロシアと隣接するバルト三国は、ソ連に長年占領された歴史もあり、強い米国の支援を得て、ロシアに対しては断固とした態度を示して独立を守りたい。ロシアの脅威は直接的かつ緊迫したものなのだろう。

 バルト三国の独立を守るために米国が行っているのは、単に軍事的支援ばかりではない。今回、会見でも示され、大変重要なのが、米国からバルト諸国への液化天然ガス(LNG)の輸出である。LNGは、もともとロシアが得意としる輸出品目であるが、バルト三国は、ロシアにエネルギーを依存していては独立を守れないと判断した。したがって、民主主義国である米国からのエネルギーの提供は、国家の独立にとって大変重要で有難いものだった。

 バルト三国のみならず、北欧でも、ロシアに対する脅威認識は高まっている。例えば、スウェーデンでは、冷戦後にいったん停止していた徴兵制を、ロシアの脅威の高まりにより、本年2018年より復活させた。国会ではほとんど反対もなく、18歳以上の男女に徴兵制が適用されることが決まった。徴兵制度の確立したスイスでさえ、女性は任意であるのに対して、スウェーデンでは、徴兵制でも男女平等が徹底している。福祉国家のイメージが強いスウェーデンだが、北欧の軍事大国でもある。

 バルト三国は、小さな国家であるが、エストニアにはNATOのサイバー・セキュリティー・センターがあったり、ラトビアではロボット開発が進んでいたり、先端技術、イノベーションの分野では、米国に対しても誇れるものがあることが示された。

  
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