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2018年5月8日

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冨島佑允 (とみしま・ゆうすけ)

大手外資系生保勤務(金利リスク管理等を担当)。 1982年福岡県生まれ。京都大学、東京大学大学院(いずれも専門は素粒子物理学)を卒業後、みずほ銀行にクオンツ(金融工学を駆使する専門職)として採用され、信用デリバティブや日本国債・日本株の運用に加え、ニューヨークへ赴任しヘッジファンドのマネージャーを経験。みずほ銀行退職後、2016年2月から現職。欧米文化に親しんだ国際的な金融マンであると同時に、科学や哲学における最先端の動向に精通している。

まずは手数料の安いインデックスファンドから

 一方で、「自分達は、市場インデックスよりも高いパフォーマンスを出せるぞ!」と主張して投資家のお金を募るファンドも存在します。このように、市場インデックスよりも高いパフォーマンスを狙うファンドがアクティブファンドです。アクティブファンドは、各銘柄への投資比率を市場インデックスから意図的にずらすことで、市場インデックスよりも高いパフォーマンスを目指します。

 アクティブファンドは、市場全体をマネするのがベストだというCAPMの教えを真っ向から否定しにかかっているわけですが、CAPMはあくまで理論に過ぎず、実際の市場がその通りに動いているとは限りません。そのため、他人よりも金持ちになりたいという多くの人の野望を取り込んで、アクティブファンドは投資の世界における大きな潮流の一つとなっています。

 例えば、日経平均を上回る収益を目指すアクティブファンドを考えてみましょう。日経平均は、東証一部上場銘柄から代表的な225銘柄を選別し、均等保有したものに相当します。つまり、日経平均に連動したインデックスファンドの場合は、日経平均を構成する225銘柄の株式をそれぞれ225分の1、つまり0.44%(1/225=0.00444…)ずつ保有することになります。そして、市場インデックスと同じ投資比率(0.44%)をキープし続けます。

 一方、アクティブファンドの場合は、運用担当者の市場見通しを反映させて投資比率を変えていきます。例えば、225銘柄の中でA銀行がアウトパフォーム(他の銘柄よりも高いパフォーマンスを実現すること)し、B銀行がアンダーパフォーム(他の銘柄よりも低いパフォーマンスを実現すること)すると予測したら、A銀行の投資比率を0.44%よりも高くし、B銀行の投資比率0.44%よりも低くします。このようにして、運用担当者の見通しを反映させて投資比率を調整することで、市場インデックスよりも高いパフォーマンスの実現を目指すのです。

 アクティブファンドは、インデックスファンドに比べると、投資家が支払わなければならない手数料が高いという特徴があります。企業業績や業界動向等について優れた見通しを持つ運用担当者や証券アナリスト(市場分析の専門家)を雇わなければならないので、インデックスファンドに比べると人件費を初めとしたコストがよりかかるためです。その分儲かるなら何も問題はないのですが、多くの実証研究によって、大部分のアクティブファンドは安定的に市場に勝つことは出来ていないことが分かっています。

 市場をアウトパフォームする銘柄、アンダーパフォームする銘柄は、事前には分かりません。それを予測することでパフォーマンスを向上させ、高い手数料を打ち返して市場インデックスに勝ち続けることは、運用のプロですら非常に困難なのです。

 それでも、銀行や証券会社に資産運用の相談にいくと、アクティブファンドを勧められることは少なくありません。手数料が高く、銀行や証券会社への実入りも良いので、販売成績を上げたいという下心があるのでしょう。もちろん、興味のあるアクティブファンドがあれば、投資することは全く問題ありません。けれども、手数料が高いことや、インデックスファンドより高いパフォーマンスの実現はプロでも難しいということを念頭に入れて、慎重に判断することをお勧めします。

 運用を始める場合は、まずは手数料の安いインデックスファンドから初めて、自分の好みに合わせてアクティブファンドも検討するという方向性が望ましいでしょう。

冨島佑允 (とみしま・ゆうすけ)
ジブラルタ生命保険勤務(金利リスク管理等を担当)。 1982年福岡県生まれ。京都大学、東京大学大学院(いずれも専門は素粒子物理学)を卒業後、みずほ銀行にクオンツ(金融工学を駆使する専門職)として採用され、信用デリバティブや日本国債・日本株の運用に加え、ニューヨークへ赴任しヘッジファンドのマネージャーを経験。みずほ銀行退職後、2016年2月から現職。欧米文化に親しんだ国際的な金融マンであると同時に、科学や哲学における最先端の動向に精通している。著書に『「大数の法則」がわかれば、世の中のすべてがわかる!』(ウェッジ)、『投資と金融が分かりたい人のためのファイナンス理論入門』(CCCメディアハウス)など。

 
  
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