麹町中学校校長の工藤勇一氏と保護者が活発に意見交換を行う「The 麹中座談会」。こうした場を企画しているのは同校のPTAだ。しかし当初から多くの保護者が足を運び、白熱した議論が行われていたわけではない。現在のような姿に至るまでには、工藤氏の進める学校改革に賛同し、保護者自身もPTAのあり方を見直してアクションを続けてきた経緯がある。PTA役員として、その中心にいた当事者に話を聞いた。
PTA活動をいかに軽くするか
就学中の子を持ち、現在進行形で学校と関わっている人の中には、「PTA役員になる」ことにネガティブな印象を持つ向きもあるかもしれない。あるいはPTAの存在意義が見えず、「会費を払うことさえばかばかしい」と感じている人もいるのではないだろうか。
「僕自身も、当初はPTAのあり方を残念に思うことがありました」
そう話すのは、次男が入学した2015(平成27)年度から3年間にわたり麹町中学校のPTA会長を務めた木村雅俊氏だ。
「工藤校長と僕に共通していたのは、『形式張ったことが嫌い』という点でした。だから、目的がよく分からないことを一から見直していったんです。委員会などの集まりでは、お菓子やお茶を用意して配るような仕事は減らしていく。PTAから保護者に向けた書類では、時候のあいさつよりも、大切な『テーマ、日時、場所』を大きく伝えることに主眼を置く。そんなふうに少しずつPTAのあり方を変えていきました」
木村会長のほか、3名の副会長が軸となり、「何よりも生徒のために」という思いで活動を展開していったという。最初に行ったのは前述のように「PTA活動を軽くすること」だった。煩雑な決まりごとに縛られ続けていては、活動に参加する保護者の負担を減らすことはできない。また、単年度ごとに役員が入れ替わることも多いため、しっかりと情報を引き継ぐ必要もあると考えた。
「委員会ごとにPTA活動を円滑に進めるため、単なるマニュアルではなく、『今年はこんなことがあった。来年はこう改善したほうがいい』という、次年度に向けた改善引き継ぎ事項を書面に残すようお願いしたのです」