韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長は、4月27日に板門店で会談し、南北の和解・関係改善、朝鮮戦争の休戦協定の平和協定への転換、完全な非核化を通じた核のない朝鮮半島という共通目標の確認、文在寅大統領の今秋の訪朝などを謳った板門店宣言を発表した。非核化と南北融和が二つの大きな柱であったと言える。
今回の南北首脳会談を評価するには、過去の南北会談を振り返る必要がある。これまでに、南北間では、2000年6月(金大中大統領と金正日総書記)、2007年10月(廬武鉉大統領と金正日総書記)の2回、首脳会談が行われている。
非核化については、第1回会談の共同宣言では触れられず、第2回会談の共同宣言では、6か国会議の9.19共同声明と2.13合意が順調に履行されるよう南北が協働することとされた。2005年9月に発表された9.19共同声明では、北朝鮮がすべての核兵器と既存の核計画を放棄することを約束し、これに対し、米国は朝鮮半島に核兵器を保有せず、北朝鮮に対し核兵器または通常兵器による攻撃をする意図を持たないことが確認された。2007年5月の6か国会議で合意された2.13合意は、北朝鮮の寧辺の核施設を最終的に放棄することを目的として活動の停止および封印を行う、とされた。
このように、非核化の問題はこれまでも取り上げられてきている。しかし、結局、合意は実施されていない。そして、今回の非核化は、北朝鮮が米国を核攻撃し得る能力を獲得した段階にあるという点で、以前とは決定的に異なる重要性を持っている。米側は、完全、不可逆的、検証可能な非核化というが、開発済みの核兵器の廃棄を検証することは極めて困難である。今回の首脳会談は、朝鮮半島の完全な非核化に合意し、米朝首脳会談への橋渡しの役割を果たしたが、北朝鮮の非核化が実現するかどうかは予断を許さない。
もう一つの柱である南北融和については、板門店宣言でも最も多くの文言が費やされている他、両首脳の人目を引くようなパフォーマンスなどもあった。むしろ、こちらの方が本題であったとも言えるかもしれない。南北分断の象徴である板門店で会談が行われたことも、南北融和の雰囲気醸成に大きな役割を果たしたと言えよう。ただ、南北の融和も、目新しいことではない。2007年の第2回目の首脳会談に際して発せられた10.4宣言でも、朝鮮戦争の終戦に向け、直接関連する国の首脳が協力することが謳われていた。
そして、南北融和も、最終的には米朝首脳会談の結果いかんに大きく影響される。休戦協定を平和協定に転換する問題にも、当然、朝鮮戦争の当事国の米国が関与し、米国の意向に大きく影響される。この際、在韓米軍の取り扱いは問題となるであろう。トランプ大統領は在韓米軍の撤退や縮小をしばしば示唆しているが、当局者はそれを否定するなど、錯綜している。
仮に米朝首脳会談が不調に終わり、米朝間に再び緊張が高まれば、南北関係もその影響を受けることになるので、南北首脳会談の真の成果は、米朝会談の結果を待って評価する以外にない。
今回の首脳会談をめぐり、米国の主要各紙は多くの社説や論説を掲載している。そのうち、ニューヨーク・タイムズ紙は、4月27日付けで‘Koreans’ Talk of Peace Raises Hopes and Doubts’と題する社説を掲載、米朝首脳会談は大きな賭けだが、核戦争の危機に比べれば話し合いの方が良い、と言っている。一方、同日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙社説‘Korea Summit Hype’は、過去の歴史に鑑み、金正恩の非核化の意図に疑念を表明している。
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