中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年5月29日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)などがある。

あいさつをする農家レストランの社長・宋益媛さん

 「ようこそ我がレストランへいらっしゃいました。ここで使っている食材は地元で採れたもので、農薬などは一切使っていません。安心、安全ですよ。都会の皆さんにとっては珍しいでしょう。ぜひゆっくり楽しんでいってください」

 アメリカに住んだ経験もあるという宋さんはこういうと、一つひとつのテーブルで名刺を配り始めた。ウィーチャットが発達している中国では、最近はあいさつの際に名刺を出さない人も増えており、ウィーチャットを交換して繋がることのほうが多いが、宋さんは名刺を配ってくれた。そこに記載されていたのが、前述した会社名だったのだ。名刺にレストラン名は記載されていなかったが、営業拠点として、このレストランの住所が書いてあった。どうやら、店名はなく、会社名のみ。宋さんは私たちのために、近くにある村からこのレストランがある村まで、わざわざあいさつにきてくれていたことがわかった。

 私の席に回ってきたとき、私が日本人であることを告げるとやや驚いた様子だったが、すぐに「まあ、とても光栄です。私はアメリカに住んでいた経験もあるので英語も得意なんですよ」といって、英語をしゃべり出した。地元の名士といった感じで、ウエイターにあれこれ指示を出したり、私たちに料理を勧めてくれていた。

安心・安全な料理、旅行気分に都市部の人も満足

 私の隣に座った大学教授に、料理の値段を聞いてみたところ、この店の料金は知らないものの(私も含め、多くが招待客だったため)、この付近の農家楽では、1卓で600元(約1万円)くらいが相場だという。日本円に換算すると、1人1000円くらいの料金になるが、それにしてはかなり豪華だ。北京や上海などで15~16品の料理が出たら、1人300元(約4500円)以上はするだろう。ここでは高級食材は使っていないものの、食材は新鮮で、とくに地鶏は弾力があってとてもおいしかった。タケノコは中国でもスープや炒めものなどに使うが、旬の食材で柔らかかった。季節ごとに山菜料理などを出すことも多く「都会の人に喜ばれる料理を心がけている」(宋さん)とのこと。

 その教授は杭州市の中心部に住んでいるという話だったが「たまに教授仲間とこうしたお店に食べにきます。気分転換やストレス解消になりますし、健康にもいいですから」と話していた。ちょっと田舎に足を延ばしただけで、安心・安全な料理が食べられ、しかも旅行気分が味わえるならば、中国の都市部の人にとって、十分満足のいくものだろう。

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