2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2018年5月28日

ゲームチェンジ

 トランプ大統領は会談中止を発表して、「ゲームチェンジ」を図りました。試合の流れを変えたのです。

 金委員長は、米国が北朝鮮を軍事攻撃ができない環境を整えてきました。その一つが、先月パンムンジョム(板門店)で開催された南北会談です。そこで金氏は、世界に融和ムードをアピールしました。当然ですが、トランプ大統領がこれに水を差すような軍事行動をとれば、世界から批判を浴びます。

 今月に入ると、金氏は電撃訪中をして中朝会談を行い、習主席との親密さを前面に出しました。これによってトランプ大統領は、北朝鮮に対して下手に手を出をせなくなったのです。さすがのトランプ氏も、予測不可能な行動に出る金氏に苦戦を強いられていました。

 そもそもトランプ大統領には弱みがあります。政治日程です。

 金氏の脳裏では、11月6日の中間選挙、2020年11月3日の米大統領選挙及び2021年1月20日の大統領就任演説を利用して、最大限の見返りを米国から引き出す戦略を練っているはずです。投票日が近づいても非核化が進まなければ、トランプ氏は焦り、譲歩をしてくる可能性が高まります。仮に再選すれば、トランプ氏は政権1期目の実績として就任演説の中で北朝鮮核・ミサイル問題を取り上げ、自分が世界に平和をもたらしたとアピールしたいのです。

 それらに加えて金氏は、会談を利用して偉大なリーダーとして歴史に名を残し、ノーベル平和賞を受賞したいトランプ大統領の心理を読み、開催日の12日まで強引な駆け引きを続ける予定だったのしょう。心理戦において金氏がトランプ氏よりも優位に立っていました。

 トランプ大統領がジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の前で、非核化を先に行い、その後で制裁緩和をする「リビア方式」を北朝鮮に適用しないと譲歩を示しても、2回目の訪中で自信を持った金委員長は米国に対する揺さぶりを止めませんでした。

 北朝鮮にしてみれば、会談に強い興味を示していたトランプ氏がこのタイミングで中止を発表するとは想定外だったはずです。一言で言えば、北朝鮮は読み間違えたわけです。


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