今回のテーマは「2018年米中間選挙」です。米国の首都ワシントンで3月4日から6日まで、国内最大のユダヤ系ロビー団体「米・イスラエル公共問題委員会(AIPAC、エイパック)」の年次総会が開催されました。AIPACは、現在10万人以上の会員を擁し、全米に17の事務所を構えています。今回の年次総会の参加人数は、約1万9000人でした。AIPACは共和・民主両党の親イスラエルの政治家を応援しています。
研究の一環として筆者は、3日間AIPACに出席し、米国政治に関する分科会に参加しました。本稿では、まず今秋行われる中間選挙に関する分科会の内容の一部を紹介します。次に、中間選挙における野党民主党の選挙戦略について述べます。そのうえで、5月ないし6月上旬開催予定の米朝首脳会談後の支持率と中間選挙の関係について考えてみます。
AIPACの予想
現在、上院は与党共和党が51議席、野党民主党が49議席(無所属を含める)を占めており、民主党が過半数をとるには2議席の上積みが必要です。ところが、今回の中間選挙で改選となる議席は、民主党が24、共和党が8、無所属が2で、多くは民主党の議席が対象になっています。
分科会で発表したAIPACの全国政治副部長エドワード・ミラー氏は、2016年の米大統領選挙でヒラリー・クリントン候補に対して、トランプ大統領が10ポイント以上引き離して勝利を収めた州で戦う民主党上院議員を挙げました。彼らはジョー・ドネリー(インディアナ州)、クレア・マカスキル(ミズーリ州)、ジョン・テスター(モンタナ州)、ハイデ・ハイトコンプ(ノースダコタ州)及びジョー・マンチン(ウエスト・バージニア州)の5人です。
次にミラー氏は、トランプ氏がクリントン氏に10ポイント以下で勝った州で再選を目指す民主党上院議員をリストしました。こちらは、ビル・ネルソン(フロリダ州)、デビー・スタべナウ(ミシガン州)、シェロッド・ブラウン(オハイオ州)、ボブ・ケイシー(ペンシルバニア州)並びにタミー・ボールドウインの5人になります。
そのうえでミラー氏は、トランプ氏が10ポイント以上でヒラリー氏を破った州で再選を狙う民主党上院議員は、共和党から攻撃をされやすく、再選が非常に危ないと分析をしていました。同氏は、共和党上院議員ではディーン・ヘラー(ネバダ州)とテッド・クルーズ(テキサス州)の両議員が苦戦を強いられると予想していました。特にヘラー上院議員は再選が難しいと言うのです。
一方、下院は共和党が237議席、民主党が192議席、空席が6(18年4月6日現在)になっています。ミラー氏は、過去20回の中間選挙で現職大統領は18回敗れており、平均で32議席失っていると主張しました。因みに、議席を増やすことができた現職大統領は、ビル・クリントン(1998年)とジョージ・W・ブッシュ(2002年)の両大統領です。
民主党にとって下院での25議席前後の上積みは、射程距離内にあるということです。従って、共和党は下院よりも上院で過半数を維持する可能性が高いと、ミラー氏は結論を下していました。