子どもの自主性を育てる
「学校」で説明を受けたあとは、「まずは役所で相談を」ということで、役所前には長蛇の列。そこでどの仕事に就くか、大学の講義に参加するかなどアドバイスをもらう。役所の担当者たちは前年、前日に「こどものまち」に参加したと思われる子が多く、慣れていることもあり丁寧に対応していたのが印象的だった。
しかしそれでもやはり参加者が多い。さかたさんも懸念していた、仕事に就けない「失業者」が溢れかえるようになった。
仕事は先述の既存のものだけでなく、自分で「起業」することも可能だ。この日は「宝くじ屋」「劇場」などを始めた子どもたちがいた。起業するには、土地を購入する必要があり、一人の持ち金ではなかなか難しいため、複数人で起業するのがポイントだという。小学3年生の男の子たちが、手持ち無沙汰になり筆者たちとおしゃべりしていたのだが、そのときふと肩もみをしてくれた。「マッサージ屋さんで起業すればいいじゃん!」とアドバイスしたのだが、いまいちピンときていないようで、話はそのまま流れてしまった。なかなか自力で考えられる子はおらず、慣れている子たちが見本となることが必要なのかもしれないと感じた。
起業に限らず、多くの子どもは分からないことだらけだったようで、近くにいる大人に色々質問していた。筆者もおそらくスタッフと間違われたのか「荷物は自分で持っているんですか?」「ここにいれば説明が聞けるんですか?」などと聞かれ、分からないことはスタッフに確認して答えていたのだが、「分からないことは分からないって言ってしまっていいですよ。大人だってわからないことがあるし、子どもたちが自分で考えないとね」とさかたさんに言われて、なるほどと思った。大人はつい子どもにいつも「正解」を教えなければ、と思いがちだが、それでは子どもの自分で考える力、自主性は育たないのかもしれない。こうしたちょっとしたやりとりからも、子どもが学べることは多い。
◆◆◆
朝10時から夕方5時まで、子どもたちはひっきりなしに訪れ、会場は賑わい続けた。大盛況でしたね、とさかたさんに言うと、「でも2日間では短すぎますね。お祭り、で終わってしまったのは残念ですが、来年は春休み中ずっと開催したいので、それに向けてということで。今年の課題を1年かけて解決したいと思います」と言った。前回の記事でも聞いたが、何がそこまでさかたさんをこの活動に突き動かすのだろうか。