「GAFA」に続々と
追徴課税を行うEU
EU域内にはグーグル、アップル、FB、アマゾン(頭文字を取って「GAFA」)に匹敵するテクノロジー企業は見当たらない。GAFAの好きにはさせないとばかりにEUは集中攻撃をかける。
EU欧州委員会は16年8月、アイルランドがアップルに違法な税の優遇措置を与えていたとして130億ユーロの追徴課税を行うよう命じた。昨年6月には「検索エンジンの独占的地位を乱用した」とグーグルに史上最高の24億2000万ユーロの制裁金を科した。同年10月にもルクセンブルクに対し、アマゾンへの2億5000万ユーロの追徴課税を命じた。
次なる標的は間違いなくFBだ。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は5月22日、欧州議会を訪れ、FBを通じて収集された8700万人の個人データが英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカの米大統領選キャンペーンに悪用され、ロシアが関与した偽ニュースを最大1億2600万人もの米有権者に拡散させたことを謝罪した。
「コーディネートされた偽情報キャンペーンに対する備えが十分ではなかった」と非は認めたが、90分間にわたり欧州議会議員の質問をはぐらかし、「笑劇だ」と激怒させた。自分が気づかない深層心理まで分析し、ビジネスに利用するFBをEUが野放しにするはずがない。
FB共同創業者の1人でザッカーバーグ氏と袂(たもと)を分かったクリス・ヒューズ氏は批判的だ。「FBユーザーが自分たちのデータが誰に、どんな形で利用されているのか理解しているとは思わない。ミレニアル世代が1日に150回もスマートフォンに触っているという心理的・社会的現実に気づく必要がある」。FBがこうした問題に直面せずに済んできたことの方がショッキングだったという。
市民のプライバシーを保護するためにつくられたGDPRが個人データを無制限に搾取するビジネスモデルに警鐘を鳴らしたのは間違いない。
トランプ米大統領の出現で
貿易協定による規制は頓挫
しかしEUの思い描く通り、GDPRの枠組みで健全なデータ利用が育まれるのだろうか。規則をつくるのはたやすいが、データ利用を妨げずに運用するのは至難の業だ。
マッキンゼー・グローバル研究所によると、08年の世界金融危機をきっかけに物・資本・サービスの移動は14ポイントも縮小したが、国境をまたぐデータ移動は05年から10年間で毎秒約5テラバイトから約290テラバイトに約58倍も拡大した。今後も約37ポイントずつ年々増加していくという。
データ保護規則はEU単独ではなく、あらゆる関係者が参加するマルチステークホルダー・プロセスか、少なくとも米国とEUの環大西洋貿易投資協定(TTIP)の枠組みの中で交渉するべきだった。しかし保護主義者のトランプ米大統領の登場で叶わぬ夢となってしまった。