2024年12月4日(水)

中東を読み解く

2018年7月24日

漁夫の利の中国とロシア

 トランプ政権がいま、イランに対する攻勢を強めている理由は何だろうか。「イラン核合意破棄」という選挙公約を実現し、短期的には外交的成果として11月の中間選挙に利用するということだろう。

 しかし、より強いのは「オバマ前政権の業績をすべて否定する」という理屈抜きの単純な動機だ。イラン核合意はもとより、環太平洋連携協定(TPP)や温暖化防止のパリ協定からの離脱、強硬な移民政策などなど、オバマ、ヒラリー・クリントン氏らが挙げた成果を片っ端からつぶす、ということに尽きる。

 トランプ氏は現在もかつてのオバマ氏側近らを“ディープステイト”(影の政府)として折に触れて非難し、核合意破棄には鼻高々だが、中東に新たな危機的状況を作り出すという意味では、国益に合致しているとは言い難い。

 むしろ、イランに対する中国とロシアの影響力が強まるという副産物を生む懸念が強い。中国とロシアが米国の「2次制裁」を恐れてイランから手を引くとは考えられない。中国はイランの原油輸出の最大の相手先であり、ロシアはシリア内戦の協力や武器取引で密接な関係にある。

 とりわけ、米国と貿易戦争の真っただ中にある中国がイランからの原油輸入量を減らす可能性は低い。中国の石油調達が滞れば、世界経済が悪影響を受けるため、米国が中国に本気で圧力を掛けるかどうかも不透明だ。中国が北朝鮮の非核化などへの影響力行使と交換に米国に取引を持ち掛けるかもしれない。


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