17年の新築マンションの供給は「首都圏全体の供給戸数はほぼ前年並みだったが、東京23区が前年比8.5%増となるなど、販売が好調な地域は供給が増えた。ただし、平均価格は東京23区が前年から6.9%上昇して7086万円、さらに23区内の山手エリアは8.2%上がって8523万円となり、買える層が限られてきた。売れ行きを示す契約率は68.1%にとどまり、好調ラインとされる70%を2年連続で下回った。
この結果、相対的に価格の低い荒川、北、足立区といった北東エリアが、つくばエクスプレスにより都心からのアクセスが良くなったので見直されてきている。
東京圏の地価はこれまでは、『西高東低』の傾向があったが、これからは住宅価格の高騰により、都心部や城南・城西エリアなど高額物件の『名』よりも、城東エリアなど交通アクセスの良い物件の『実』を取るようになるのではないか。五輪の関係でインフラ整備の進む湾岸地域は、土地利用の点で開発の余地があるため、供給はこちらが中心となる。資産価値の伸びしろから考えれば、こういった地域に目を向けるのも悪くないのではないか」
「空中族」
今年については、「建設コストが高止まりし、地価も下がらないので、マンション価格が下がることはない」と指摘、当面は高い水準が続くとの見通しを明らかにした。東京オリンピック後については「横ばいで推移し、価格は落ちないだろう」との見方を示した。
ここ数年はマンション投資が一般化してきて、サラリーマンもマンション投資をする人が増えている。さらに、その中でも高層のタワーマンションなどを次々と住み替えて売却益により住居をステップアップする「空中族」と呼ばれている居住者たちが現れている。その多くは共働きで年収は1000万円を超えており収入的にも余裕があり、1億円を超えるような高額物件でも買うことができる。その半分が実需で、半分が投資用で、売却益が出ると分かると税法上短期売買となり譲渡益課税を多くとられても、売却するケースがあるという。
日本の不動産投資を下支えしてきた外国人投資の動向に関しては、不動産相場を大きく動かすことにはならないとみている。
「全体的にはここ数年は一時の積極的な買いは弱まっており、売り越しになっている。欧米系の投資家は、古くから日本の不動産投資に投資していたファンドが高値での売却を進める一方で、ノルウエー中央銀行など新たな投資家が進出している。中国、シンガポールなどアジア系投資家は、アジアの新興国の成長率が鈍化し、地政学リスクも高まる中で、市況が安定している日本への投資を重視しているようだ。外国人投資家の不動産の売却がマンションの相場を一気に崩すようなことはない」