トランプ家の金庫番
二つ目は、これまで長い間、トランプ・ファミリー・ビジネスの“金庫番”として重要な役割を担ってきた「トランプ・オーガニゼーション」財務担当責任者(CFO)アレン・ウィーゼルバーグ氏(71)をめぐる新たな問題だ。
ウォールストリート・ジャーナル紙は7月26日、そのウィーゼルバーグ氏が、トランプ氏の元顧問弁護士だったマイケル・コーエン氏に対する捜査に関連してニューヨーク連邦地検から事情聴取を受けた、と報じた。
同紙によると、ニューヨーク地検がウィーゼルバーグ氏に関心を持ち始めたのは、先にFBIが押収したコーエン氏の電話記録の中で、元ポルノ女優に支払った13万ドルのもみ消し料の資金繰りについて「アレンとも話し合った」として同氏の存在に言及していたのがきっかけだった。
さらにこれと関連して、コーエン氏が大統領選挙2カ月前の2016年9月、ひそかに録音していたトランプ氏との電話のやりとりの一部も明らかになり、その中で「(13万ドルは)現金払いで」とトランプ氏自らが指示したと受け取られる発言も暴露され大きな話題となっている。
ウィーゼルバーグ氏は、トランプ氏の父親フレッド氏が不動産事業に乗り出した当初から経理関係を一手に握り、トランプ氏一家の投資、融資、税処理などあらゆる金銭の流れを統括してきた。トランプ氏は大統領就任以来、表向き同社の経営にはタッチしていないが、依然としてオーナーを務めており、その資産管理もすべてウィーゼルバーグ氏が担当しているともいわれる。
その彼が最近、コーエン氏捜査の関連でニューヨーク連邦地検による事情聴取の対象となったことで、トランプ・ファミリーの税金関係も含めた資金の流れ、さらにはロシア関連ビジネスの実態などにもメスが入るかどうかが、今後の焦点となる。
ただ、これら二つの新たな展開については、あくまでニューヨーク連邦地検の捜査であり、表向きロシア疑惑捜査とは無関係だ。
しかし、こうしたトランプ氏本人にとって、予想外のきわめて不都合な事実が浮かび上がってきたきっかけは、もともとモラー特別検察官チームからの照会でFBIがコーエン氏の周辺捜査に乗り出したからであり、今後さらにニューヨーク連邦地検の捜査いかんでコーエン氏やウィーゼルバーグ氏からロシア疑惑関連の重要情報が得られた場合は、当然のことながらモラー特別検察官側と共有されることになる。
また、ロシア疑惑とは無関係に、とくに厚い秘密のベールに包まれているトランプ氏の税務処理問題をめぐって何らかの違法性の疑いが浮上してきた場合は、大統領自身が捜査対象にされる可能性も皆無ではない。