2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2018年8月8日

若手女優のぶつかり合いが胸に迫る

 2週間が経って、赤ん坊を生んだ高校生の中本千絵(蒔田彩珠)とその父母が産院を訪れる。千絵の体調が悪いというので、両親が病院に連れて行ったところ、「出産したのではないか」と診断され、千絵を問い詰めたところ産院のそばにこども捨てたこと打ち明けたからだ。出産はひとりで、自宅のお風呂場でなされた。

 医師の由比(瀬戸)に謝る両親をさえぎるようにして、千絵が叫ぶ。

 「近所のごみに出そうかと思ったけど、終わってたし、わざわざ自転車で捨てにきたら無駄になった。そんなのみせないでよ」

 由比は、千絵に諭すように優しく尋ねる。

 「どうしてうちに捨てたの?前にも来たことがあった?」

 千絵はそれに答えずに、じっと見つめているアオイ(清原)に噛みつくように大声をあげる。

 「なにみてんの。あんなには関係ないでしょ」

 「わたしはこの子のお世話を」とアオイ。

 「仕事なのに善人ぶらないでよ」

 清原果耶と蒔田彩珠という、次の時代を担うであろう若手女優のぶつかり合いは胸に迫る。これからのちもふたりは、別の作品で演技を競うのだろう。

 千絵と両親が産院を去ってから、看護師の望月(水川)はアオイに語りかける。

 「だから、いったでしょ。あまり入れ込んじゃいけないって」

 アオイは、反発する。

 「勝手に生んで、ゴミみたいに捨てて、なんでそんな人にわたさなければいけないんです?」

 「生んだのはあの子で、あなたは看護助手。あの子は30週育ててきた。あなたは2週間でしょ。3月ぐらいか、彼女が妊娠に気づいたのは。どんな気持ちで桜を見たんだろ。赤ちゃんだけを見ちゃだめよ」と、望月は諭すのだった。

 アオイは気持ちが収まらず、千絵に一言いってやりたくて、海沿いの急な坂道を自転で登る。あえぎながら、途中で息切れをしながら、アオイはこの坂道を自宅で出産して、自転車の前かごに、赤ん坊を入れた紙袋を入れて、産院まできた千絵の姿がみえてくる。出産後の苦しみのなかで、懸命に自転車をこぐ。そして、桜の花散ること、産院の前でたたずんでおなかを抑えながら、なかにはいることができなかった千絵である。

 アオイは、千絵の自宅の前に着くが、そのまま自転車の方向を変えて、泣きながら坂道を下っていった。

  
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