特にオバマ政権時代には、台湾問題で中国を怒らせないために、高度な性能・技術を持つ戦闘機や潜水艦を台湾に売却することが控えられた。上記ポンフレットの論説が指摘するところによれば、オバマ政権時代には、台湾の防衛方針として「ヤマアラシ戦略」がとられ、それは台湾に高度な空軍、海軍の戦力を保持させるかわりに、小規模な歩兵や武器を配備することによって、中国の武力進攻から台湾を守るという軍事戦略であったと言う。そのような軍事戦略が、ある時期の台湾防衛の主軸であったかどうかは、はっきりしない。ただし、「台湾関係法」という国内法を持つ米国としては、台湾防衛のためにいかなる種類の武器を供与・売却するかということが内部で真剣に議論されていたとしても不思議ではないと思われる。しかし、いずれにせよ、現在の米国内の状況はオバマ時代とは様変わりした、というのが、ポンフレットの見方であり、それはその通りであろう。
中国は今年初めに、戦闘機、爆撃機に台湾周辺を飛行させ、蔡英文政権を威嚇した。また、中国の国営テレビは台湾の一村落とみられる場所を人民解放軍が武力侵攻する場面を広く放映したりした。さらに7月には、中国の海軍が台湾海峡で実弾使用の軍事演習を行った。
これに対し、米国は7月初めに、2隻の駆逐艦を台湾海峡に派遣した。米国内部では、上記論説も指摘する通り、爆撃機F-35、F-16改良機などを台湾に売却することを検討中とも報じられている。
2月には米台高官の交流を勧奨する「台湾旅行法」が成立し、7月26日には2019会計年度の「国防授権法」が米国議会において議決され、8月17日にトランプ大統領の署名を得たところである。同法には、台湾の防衛能力向上の支援、中国のRIMPAC演習への招待禁止なども盛り込まれている。台湾をめぐる米中の対立は、今後、より緊張・対立の度合いを増すものと思われる。
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