ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年6月16日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

 これほどはっきりした主張は、これまでに見たことがないものだ。

 米国は長らく、中国は北朝鮮に対して影響力を振るう膨大な資源を持っているのに、それを使おうとしないと主張してきた。そう考えると、梁国防相の発言内容はつまり、中国が朝鮮半島情勢の「オーナーシップを取りにかかった」と言っていいものだったのではないか?

 もしかしたら、そうかもしれない。もっとも、梁国防相の発言について見解を求めた時、アジア財団のスコット・スナイダー氏は、ここ数週間のかなり辛辣な応酬を考えると、一連の発言は同様に、金正日(キム・ジョンイル)が「次」にしようとしていることに対する中国の懸念を示していると「読む」こともできると警告した。

 やはり悲観的だったのが、マンスフィールド財団のゴードン・フレイク氏だ。「あんたとわたし、離れられない2人よね」と北朝鮮は自分と中国の仲のことを言い続けるけれど、平壌から聞こえてくる調べは依然、中国に対する不満だ。南北問題の進展を不可能にすることで、基本的に中国の『3段階案』をあからさまに拒むような姿勢をほかにどう解釈すればいいのか分からない」と同氏は語った(「あんたとわたし…」部分、原文ではthe announcement about the ‘islands in the stream'。ドリー・パートンのラブソングに「2人は流れの中の小島みたい。隔てるものは何もない」という一節あり、それを引用している)。

 梁国防相の講演が終わり、ロシアのセルゲイ・イワノフ副首相が北朝鮮の爆弾と挑発に対して中国と同じように強く抗議した講演(だが、イワノフ副首相は「北方領土」を巡る日本との紛争を物笑いの種にし、会場の参加者はともかく自身を楽しませた。この点は最後に詳述する)の直前の休憩中には、マイク・マクデビッド、ボニー・グレイザー、ラルフ・コッサといった仲間たちが「討議」し、中国政府は引き続き、韓国政府が昨年末、北朝鮮が再度軍事攻撃をしかけてきた場合には武力行使すると警告した時に真剣だったことを大いに心配しているようだ、ということで非公式に合意した。

 さて、「お膳立て」はこの辺にして、日本の民主党政権が今年のシャングリラ・ダイアローグでどのような「パフォーマンス」を見せたかという本題に移ろう。

ちょっと不自然じゃない? 
日米同盟には触れない北澤防衛相

 読者の皆さんは間違いなく、軍事・戦略同盟を通じた米国との協力関係に日本が依存している状況や、北朝鮮の大量破壊兵器計画の抑止にからむ日本の利益について確固たる議論がなされ、東シナ海での中国との争いに対する日本政府の懸念について率直な意見が述べられたことを期待するだろう。日本の政府関係者がこうした問題やさらに多くのテーマについて雄弁に語った、と。

 我々としても、日本政府の意見表明とパフォーマンスが、日本の有力ジャーナリストや学者、シンクタンクの専門家が内々に見せた本当に立派なパフォーマンスに匹敵したとお伝えしたいのはやまやまだ。

 本当に信じてほしい。心からそう思っている。何しろ日本の民間の公式代表団には、ジャーナリスト仲間で友人でもある朝日新聞の加藤洋一、藤谷健両氏や、東京財団の渡部恒雄氏をはじめとしたシンクタンクの要人がいた。また、自民党の参議院議員、川口順子氏が非常に巧みかつ雄弁に討論に参加し、中国やロシアの代表団に非常に厳しい質問を投げかけたことも是非お伝えしたい。

 だが、公式の日本政府レベルでは、皆さんの主たる「代表者」は北澤俊美防衛相だった。北澤防衛相は「アジアにおける新たな軍事ドクトリンと軍事能力」と題した本会議の本格討論にインドおよびインドネシアの防衛相とともに参加するという重責を割り当てられていた。

 ところが、我々が取ったメモによれば、北澤防衛相はもっぱら地震と津波という二重の悲劇とそれに続く原子力災害について語った。与えられていた持ち時間のざっと3分の2は、その話題に割いたと言っていいだろう。

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