SCO内で対抗する中露
中露はそれぞれ大国意識が強く、両者間には、勢力圏争いともとれる動きがしばしば見られる。ロシアが中国の勢力圏拡大を警戒しているのも既述の通りだ。
今回のSCOサミットでも、次期議長国である中国の胡錦濤国家主席は反テロなどで対応能力の強化を訴えるとともに、加盟国に対して低利の巨額融資を持ちかけ、その見返りに資源の大量購入を取り付けようとするなど、安全保障および経済の両方で主導的立場をとる意思を表明するとともに、中央アジアの資源を意のままにしようとしている意図も感じさせた。それに対し、ロシアのメドヴェージェフ大統領は、テロ対策では準加盟国の存在が重要となると指摘するなど、関係アクター(ロシアは特に、インドを想定)を増やすことによって中国の重みを薄めようとしているように思われた。
中露首脳会談~国際的問題での協調路線
SCOサミット終了後、胡主席はカザフスタンからロシアに移動し、中露善隣友好協力条約署名から10年の関連行事に参加したのに加え、6月16日にメドヴェージェフ大統領との中露首脳会談に臨んだ。本会談では、「今後10年の中露関係の発展計画」と「共に関心を持つ国際的、地域的な重大問題」など二国間の問題に加え、リビアや中東、北朝鮮情勢など国際情勢も議論され、共同声明に署名がなされた(なお、胡主席は16日にプーチン首相とも会談。その後、両首脳はロシアのサンクトペテルブルグに移動し、17日からの「国際経済フォーラム」に参加した)。
中露首脳会談に際し、胡主席が「中露の戦略的協力パートナーシップはこれまでにない大発展を遂げた」と述べるなど、両国間の蜜月ぶりをアピールしていた。
実際、国際的な問題については、強い協調関係が見られた。共同声明では、両国の関係発展や経済協力の強化(両国間の貿易高を2020年までに昨年比3倍以上の2000億ドルにまで引き上げる、など)以外にも、北朝鮮の核問題は外国的手段によってのみ解決されるべきだとして、6ヶ国協議の早期再開の必要性を強調したり、中東・北アフリカにおいて平和的手段で問題を解決するよう呼び掛けたりするなど、リビアに対するNATOの空爆のように、欧米が内政干渉的な姿勢をとっていることを批判した。対リビア武力行使を容認した国連安全保障理事会決議を拡大解釈せず、全ての関係者がその内容を順守するように呼び掛けたことも興味深い。加えて、G20やSCO、そして経済新興5ヶ国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)や中印露3ヶ国での協力強化を盛り込み、新興国の影響力拡大を目指す方針も表明された。つまり、中露は国際関係においては、SCOサミットで示したのと同様に、対欧米対抗路線で政治的、経済的な戦略的パートナーシップ関係を強化したと言えるのである。
会談後、両首脳は、その意義を高らかに強調し、中露対話が両国のみならず世界の安全や安定のためにも極めて有益であるとしつつ、2001年の中露善隣友好協力条約への署名から両国が構築してきた信頼と高レベルの関係の水準を評価し、今後10年がより一層の関係発展の重要な機会になると表明した。
中露首脳会談~天然ガス供給問題では歩み寄れず
他方、胡主席の訪露時に、ロシアから中国への天然ガス輸出契約の調印が予定されているということが5月半ば頃から、大々的に報じられていた。ロシアの半国営天然ガス独占企業であるガスプロムは、2009年に中国石油天然気集団公司(CNPC)と、今後30年にわたる年間約680億立方メートル(西シベリアから約300億立方メートル、東シベリアから約380億立方メートル)の天然ガスを輸出することで基本合意をしていたが、価格面で折り合いがつかず、最終合意には至っていなかった。