しかし、時が経過すればするほど、ロシアにとって有利になるという見方もできる。供給源の多角化に成功した中国は、ロシア産天然ガスはそれほど重要ではないと常々強調してきたが、2010年だけで中国のガス需要は22%も増しており、現在の供給源のみでは、早晩エネルギー不足に陥るのは間違いない。さらに、世界の多くの原発が日本の福島第一原発事故の影響を受け、また、アラブの民主化ドミノが液化天然ガス(LNG)供給国にも及び、加えてシェールガスの採掘開始が予定通りに進まないことなどもあり、欧州や東南アジアで天然ガスとLNGの需要が高まっているという事実もある。つまり、天然ガスの価値が高まっており、時代の流れは確実に資源保有国にとって有利な展開を生み出しているのである。それにより、今後、天然ガスの価格上昇も想定されるなかで、中国がロシア産ガスの重要性を感じたときには、中国はロシアに価格と条件で譲歩せざるを得なくなるため、時の経過はロシアにとって有利とも言えるのである。
このように、対欧米路線では強調できる中露だが、地域の勢力圏争いやエネルギー問題では明確な緊張関係が見てとれる。国際政治の変動と大国のプライドに縛られる中露両国は、経済と政治のはざまで微妙なゲームを続けながら、しばらくはグレーな関係を維持しそうである。
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