多言語・多人種
ニューヨーク市クイーンズ区「74丁目ブロードウエイ」の駅前にあるダイバーシティ・プラザで9月8日に行われた集会に、オカシオ・コルテツ候補が参加しました。そこで、同候補に突撃取材を行いました。
「どうやってクローリー氏を破ったのですか」
アポイントメントがなかったのにもかかわらず、オカシオ・コルテツ候補は筆者の質問に笑顔で回答してくれました。
「私は英語とスペイン語を話します。私のような2カ国語を話す有権者が選挙区にはたくさんいます。彼らを標的にしました」
続けて、同候補はこう語りました。
「若者を組織化して、選挙に巻き込みました」
クローリー下院議員は、常に選挙に出向く有権者のみに焦点を当たのに対して、オカシオ・コルテツ候補は新しい有権者を開拓し、積極的に支持拡大を図ったのです。白人男性のクローリー氏には、多言語と多人種を組み合わせた選挙戦略で勝つという発想がなかったのでしょう。ここに同候補が勝利した秘訣がありました。
さらに、若者を巻き込んだ点も看過できません。オカシオ・コルテツ候補は、資本主義と大企業に反対する「民主社会主義者」です。
米ギャラップ社による世論調査(18年7月30日-8月5日実施)によれば、米国社会では51%の若者(18-29歳)が社会主義を肯定的に捉えています。他方、資本主義を肯定的に考える若者は45%で、6ポイント下回っています。10年に実施した同調査をみますと、資本主義肯定派の若者は68%でした。この頃から比べると、23ポイントも減少したことになります。
つまり、米国の若者の中では資本主義に対する好感度が低く、65歳以上の有権者と比較すると、明らかに社会主義に対して抵抗が少ない傾向があります。大学を卒業後、多額の学資ローンの返済に追われ、将来に不安を抱く若者の心理が働いているのでしょう。リーマンショックの影響を受けた親の姿をみて、資本主義に対する不信感が高まったのかもしれません。「オカシオ現象」の背景には、反資本主義の若者の力があります。
オカシオ・コルテツ候補は、米国社会の若者の間に広がる反資本主義の波に乗って、ウォール街からの大口献金を受けている民主党エスタブリッシュメント(既存の支配層)のクローリー下院議員に反対する若者を巻き込むことに成功しました。ダイバーシティ・プラザで開催された集会に参加したフォーダム大学1年生の男子学生にインタビューを行うと、「ツイッターやフェイスブックを通じてオカシオの支持者が献金する額は小口で、大企業の大口献金とは違います」と資本主義の代表である大企業の献金を強く非難していました。
これらに加えて、オカシオ・コルテツ候補は、人権軽視の「不寛容政策」を実施するドナルド・トランプ米大統領に対して、「人権第一主義」の立場をとり、同大統領を激しく批判しています。
「ICE(移民・関税捜査局:Immigration and Customs Enforcement)は廃止するべきです。ICEは人権を侵しています。親と子供を引き離しているからです」
ICEは不法入国した親を刑務所に拘束し、子供を収容センターに入れる、いわゆる「親子分離政策」を実行しています。非白人が70%を占めるニューヨーク州第14選挙区においてオカシオ・コルテツ候補は、非人道的な移民政策を正当化するトランプ大統領に真っ向から対立する姿勢をみせ支持を得ました。