今回のテーマは「米中間選挙とオカシオ現象」です。米東部ニューヨーク州第14選挙区(ニューヨーク市東部ブロンクス区と北西部クイーンズ区)における民主党予備選挙で6月26日、元ウエイター兼バーテンダーのアレキサンドリア・オカシオ・コルテツ候補(28)が、10期20年連邦下院議員を務めている現職のジョセフ・クローリー氏(56)を破るという大波乱が起きました。民主党にスターが誕生しました。早くも共和党右派は、同候補を警戒し始めました。
現地でオカシオ・コルテツ候補にインタビューをしたので、本稿では同候補の声を交えながらオカシオ現象を分析します。
オカシオ・コルテツの登場
オカシオ・コルテツ候補の父親は南ブロンクス区、母親は米自治領プエルトリコの出身です。同候補はブロンクス区生まれで、現在も同区に在住しています。両親はよりレベルの高い教育を受けさせようと、娘をニューヨーク州ウエストチェスター郡ヨークタウンハイツにあるヨークタウン高校に入学させました。
オカシオ・コルテツ候補は、ボストン大学では経済学と国際関係論を専攻し、在学中、エドワード・ケネディ連邦上院議員(当時)のボストン事務所でパートタイマーとして働いていました。2008年米大統領選挙でバラク・オバマ前大統領の陣営にボランティアの運動員として参加しました。
16年米大統領選挙では、バーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)の陣営に入り、ボランティアの運動員のまとめ役であるオーガナイザーになります。同候補は、ニューヨーク州におけるサンダース上院議員の集会を開催しました。
オカシオ・コルテツ候補にとって、サンダース議員はメンター(師)です。サンダース陣営で選挙活動を行っている間、白人警察による黒人男性の射殺及び絞殺に反対する「黒人の命だって大切だ」運動の活動家、組合のメンバー、環境保護論者、フェミニスト、性的マイノリティ(LGBTQ)、「米国民主社会主義者(DSA:Democratic Socialists of America)」のメンバーと関係を構築していったといわれています。
米誌「ザ・ニューヨーカー」(電子版 18年7月23日)によれば、16年米大統領選挙における民主党候補指名争いで、サンダース上院議員がヒラリー・クリントン元国務長官に敗れると、サンダース陣営の元スタッフは「ブランド・ニュー・コングレス」という政治団体を設立しました。同団体のミッション(使命)は、サンダース議員と政策の立場が一致する候補を連邦上下両院に送り込むことです。具体的に言えば、「国民皆保険」「公立大学の授業料無償化」「最低賃金の値上げ」「反企業献金」などです。
同団体が募集をかけたところ、1万1000人の応募がありました。オカシオ・コルテツ候補の弟ガブリエル氏が、姉の許可を得て、同団体に応募しました。
結局、同誌によると、オカシオ・コルテツ候補は同団体の支援を得ることになり、メディアトレーニング及び政策に関するコーチングを受け、連邦選挙委員会(FEC :Federal Election Commission)への申請の仕方、討論会の戦術並びにソーシャルメディア戦略を学び、民主党予備選挙に臨んだのです。