2022年12月8日(木)

サムライ弁護士の一刀両断

2018年10月18日

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河本秀介 (かわもと・しゅうすけ)

弁護士

敬和綜合法律事務所所属。東京大学卒業後、三菱重工業での勤務経験を経て、2007年に弁護士登録。以後、会社関係訴訟、企業経営への助言、株主総会指導、M&Aアドバイスなど、コーポレート分野を中心に、幅広い内容の業務を遂行している。

海賊版サイトへの対抗手段「ブロッキング」とは

 海賊版サイトに対しては、内閣に設置された知的財産戦略本部でも対策が検討されています。なかでも、ネットユーザが海賊版サイトにアクセスしようとした場合に、プロバイダ側で強制的に接続を遮断するなどの「ブロッキング」の導入の是非を巡って議論となっています。

 これに関して、知的財産戦略本部は本年4月13日、特に悪質な海賊版サイトに対してブロッキングを実施できる環境整備が必要であるとして、法制度が整備されるまでの間の臨時的・緊急的な措置として、特に悪質性の高いサイトについて民間事業者の主導でブロッキングを行うことが適当などとする緊急対策案を決定・公表しました。

 その後、知的財産戦略本部に「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)が置かれ、海賊版サイト対策について、ブロッキングの法制度化の是非を含めた議論がされています。

 このように違法なサイトを見られなくしてしまうという措置は、一見すると理にかなっているように思えるかも知れませんが、実は、ブロッキングには、主に憲法に定める通信の秘密との関係で課題があります。

 ブロッキングを行うためには、違法なサイトへのアクセスかどうかにかかわらず、あらゆるネットユーザのアクセス情報を取得し、そのアクセスがブロッキング対象かどうかをチェックする必要があります。

 憲法に定める通信の秘密には、通信の内容だけでなく通信を行ったこと自体の秘密が含まれると解釈されていますので、プロバイダがユーザのアクセス情報を網羅的にチェックすることは、通信の秘密を侵害する可能性があるというわけです。

 ブロッキングに反対する側は、ブロッキングは憲法で定められた通信の秘密に抵触する可能性があり、また、表現の自由や知る権利からも問題が大きいとしています。

 ブロッキングに賛成する意見も、ブロッキングが通信の秘密を侵害する可能性があることは認めたうえで、海賊版サイトへの実態の解明が極めて困難であるため、権利保護のため緊急かつやむを得ない措置として認められるべきとするものが大半です。

 なお、10月15日に開催された検討会議では、ブロッキングに対する賛否の意見が鋭く対立したまま協議が終了し、今後の協議の見通しも立っていないという事態になりました。

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