日本大学アメリカンフットボール部の選手が、試合中、ボールを持っていない無防備な状態の相手チームの選手に、背後から反則となるタックルをして怪我を負わせた事件が大きな波紋となっています。
この件については、5月22日、反則タックルをした選手が、弁護士同席のうえで記者会見を行いました。選手は一連の経緯や監督やコーチからどのような指示や発言があったのかなどについて詳細に説明した上で、監督やコーチの指示があったにせよ、指示の是非を自分自身で判断することなく反則行為をしてしまったなどとして、相手選手に改めて謝罪しました。
また、5月23日、選手が所属する大学チームの監督とコーチが記者会見を行い、選手に対して「クオーターバックを潰してこい」などの発言があったことを認めつつ、監督による指示ではなく、また、怪我をさせる目的で発言したものではなかったなどと説明しました。
メディアやネット上の論調を見ていると、選手による記者会見に好意的な意見が多いのに対して、大学側の記者会見は批判的に受け取られている様子があります。大学側にとっては、記者会見前よりもむしろ「炎上」が加速しているという印象が否めません。
同じ出来事について記者会見を開いた選手と大学側で、くっきりと明暗が分かれる格好となりましたが、どのような点が違ったのでしょうか。
両会見の違いを紐解くと、組織が不祥事を起こした場合にどのような対応を取るべきか、いわゆる危機管理のあり方が浮かび上がってきます。
不祥事はいつでも起こりうる
企業や団体、チームなどの組織にとって、不祥事を起こさないよう日ごろから予防することが大切なことは言うまでもありません。
今回の件でいえば、アメフトは選手の身体がぶつかり合うという危険な側面がある競技です。大学・チーム側には競技中の安全確保やルールの遵守について選手の指導を徹底する必要がありますし、選手はそれらをプレーで実践することを心がける必要があります。
今回のタックルが反則だと分かった上でのことだとすると、選手にプレー中の安全確保やルールの遵守に対する意識が不足していたことは否定できないでしょう。また、直接の指示があったかどうかは別にしても、大学・チーム側としては、少なくとも選手に対する指導が不足していたといえそうです。チーム内で、不祥事の予防が足りていなかったことは否めません。
もっとも、普段から予防を心がけていたとしても、ちょっとしたきっかけで起こってしまうのが不祥事です。そして起こってしまったことは元には戻せません。問題は、実際に不祥事が起こってしまった場合に、どのように対応するべきなのかということです。