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Wedge REPORT

2018年11月1日

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驚異のフリーソフト
「その筋屋」

 そうしたなか、岡山の中小事業者がグーグルマップにリアルタイム情報をなぜ掲載できるようになったのか。それはグーグルが作成した「GTFS(General Transit Feed Specification)」というデータフォーマットを用いてデータを整備したことだ。

グーグルマップに載れば外国人観光客も使える (Wedge)

 GTFSはオレゴン州ポートランドの鉄道事業者「TriMet」とグーグルが連携して開発したデータフォーマットで、これをグーグルに送ることで、バス事業者自身で時刻表や停留所の位置などの情報をグーグルマップに掲載することが可能になる。岡山市内の各事業者はバスロケについても、その派生形である「GTFSリアルタイム」を作成し、グーグルに送ることでグーグルマップに表示することができるようになった。

 このGTFSは国交省の〝お墨付き〟だ。2017年3月、国交省はGTFSに日本独自の項目を加えたものを「標準的なバス情報フォーマット」として制定した。

 同省総合政策局公共交通政策部交通計画課の三浦良平地域振興室長は「早期に各バス事業者が経路検索事業者にデータ提供をしていくために、既存のフォーマットであるGTFSを基本に整備した。将来的にはバスロケなどのリアルタイム情報も含めたフォーマットの制定を検討している」と語る。

 国交省がデータフォーマットを定めても、バス事業者が自らそれを作成できなければ意味がない。しかし、「以前はエクセルを使って手作業でダイヤ作成をしていた」(岡山のバス事業者・下津井電鉄バス事業部長の岡邉秀晴氏)というバス事業者が、自らGTFSデータを作成するのは難しかった。

 それを解決した立役者の1人がSujiyaSystemsの高野孝一代表だ。高野氏の開発した「その筋屋」というソフトウェアを用いてダイヤを作成すると、国交省の定める標準的なバス情報フォーマットとして出力でき、バスロケシステムと連動させればGTFSリアルタイムとしてもデータ出力が可能になる。

 高野氏は元々システム開発会社に在籍していたが、辞める際に岡山のバス事業者・宇野自動車の宇野泰正社長から同社のバスロケシステムの開発を受託。同システムを用いるために、「その筋屋」を完成させた。結果、2017年4月、宇野自動車はいち早くグーグルマップにリアルタイム情報を掲載できるようになった。

 標準的なバス情報フォーマットを定めた検討会で、座長を務めた東京大学生産技術研究所の伊藤昌毅助教は、「その筋屋」について「大手システム会社のソフトウェアと同等の性能があるにもかかわらず、無償で配っていることが驚異的だ」と語る。ダイヤ作成業務に従来のシステムと「その筋屋」を併用している、あるバス事業者の担当者は「あと2~3年で従来のシステムの更新時期を迎える。そのタイミングで、『その筋屋』に完全に移行しようとしている」という。


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