三内丸山遺跡にはバスで
青森市交通局の挑戦
「その筋屋」を用いることで、グーグルマップの経路検索に対応する事業者は全国に徐々に広がっている。その一つが、青森市営バスだ。青森市企業局交通部管理課の三浦公貴主査は「以前は青森駅から名所の三内丸山遺跡をグーグルマップで検索しても、バスが案内されることはなかった。そこでGTFSでのデータ作成を始めた」という。
三浦主査はGTFSに入力するための停留所の緯度と経度のデータを取得するため、1人で全停留所を回った。また、高野氏の助けも得て運賃データも入力し、GTFSでのデータ作成に成功した。
「観光案内所に外国人観光客がグーグルマップを開きながら停留所の位置を聞きにきてくれた。早速、停留所の乗り場番号までわかるようにデータを入れ直しました」と語る。
「その筋屋」を用いることでバス事業者の生産性向上も図れている。下津井電鉄では7月からグーグルマップにリアルタイム情報を公開したが、前出のとおりこれまではダイヤ作成業務を手作業で行っており、ダイヤ改正の際には停留所に貼る時刻表を社員が手作業で作り、チェックしていた。また、バスロケもなかったため、ダイヤ作成の際に各停留所の遅れ時分はわからず、乗務員からの意見を聞いて、経験と勘で作るしかなかったという。
それが、「その筋屋」とバスロケシステムを用いるようになったことで、「乗務員の持つ運行指示書の作成や勤怠管理など、ダイヤ改正で発生する事務作業がその筋屋だけで完結するようになった。また、一つ数万円のタブレットでバスロケが使えるようになったことで、実際の運行時分を基にダイヤ作成を行えるようになった」(岡邉部長)という。
公共交通がより
「つながる」ために
このようにデータ作成が進んだことはバス業界に新たな動きをもたらしている。
両備グループ(岡山市)は8月、グーグルマップにリアルタイム情報を掲載するのと同時に、その情報を無償で誰でもダウンロードできる「オープンデータ」として公開した。小嶋光信会長は「公共交通に大きな変革が起きており、利用者にとってよりシームレスな移動を実現しなければならない。そのためには鉄道など他の交通機関との連携が必要だ。そこで、まずは自ら機械が判読可能な形でデータをオープンにすることにした」と語る。
公共交通オープンデータ協議会の会長を務める東洋大学情報連携学部情報連携学科の坂村健教授は「データセンター上でビジネスを創出する時代が来ており、データをオープンにすることで、事業者が自ら取り組むのは難しい課題を解決し、新たな価値を生むことが可能になる。結果的にそれはオープンにした事業者自身を助ける」と語る。
1960年代後半に輸送人員が100億人を超えてピークを迎え、その後は大きく減少、事業者の64%が赤字の路線バス業界。人口減少によって経営悪化が続く中、データをオープンにすることによって、低コストで新たな需要を掘り起こし、生産性の向上を図ることが必要だ。
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