「金曜日には、オフィスの近くでcar2goを借りて、駅前にある専用駐車場に乗り捨てて、電車で遠出している。同じアプリで予約できるから便利だよね」とドイツのシュツットガルトに住むクリスチャン・ベッカーさんは語る。
「同じアプリ」とは、ドイツ大手自動車メーカーであるダイムラー傘下の企業ムーブルの提供するアプリ「moovel」だ。
moovelはカーシェアリングサービスの「car2go」、配車サービスの「mytaxi」、ドイツ鉄道「DB」およびドイツ鉄道のシェアリング・モビリティアプリである「Flinkster」といったモビリティサービスをワンストップで予約、決済、利用できる。
例えば、ダイムラー博物館からシュツットガルト駅を検索すると、都市鉄道で乗り換えて約40分で到着するが、カーシェアリングのcar2goであれば約20分で到着して、駅から近い専用駐車場に止めて、電車に飛び乗ることができると案内される。
これまでにも、ダイムラーはモビリティサービスに力を注いできた。2008年という早い段階から、乗り捨て可能で利用時間によって課金するカーシェアリングサービス「car2go」を自ら運営しており、会員数は500万人に達している。また、14年にはオンデマンドのタクシー配車サービスを運営する独mytaxiと提携し、イギリス、アイルランド、スペインなどでオンデマンド配車事業を展開する英国Hailoを合併して事業を統合した。
16年10月のパリ・モーターショーの会場では、ダイムラーのディーター・ツェッチェ取締役兼会長が中長期の経営ビジョン「CASE」を発表した。CASEとは、Connected、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)、Electric(電動化)の頭文字をとったものだ。
「これら4つは、それぞれがすべての産業をひっくり返すほどの力を持っており、これらをつなぎ目なくつなげると、本当の革命が起きる」(ツェッチェ氏)。18年5月に全世界で同社のモビリティサービスを利用した顧客は2290万人に達した。これは、前年同月比で88%もの増加にあたる。
moovelのように、移動手段をつなげ、最適な移動を提供する「MaaS」(Mobility as a Service)が、各国で急速に台頭している。