ここにきて急速にMaaSが注目される理由は、自動運転技術の進化やクルマがつながることにより、オンデマンドでモビリティサービスを提供できる範囲が急速に広がるからだ。
これまでの、自動車を個々に所有する形から移動サービスを消費することへ移行する。個人の移動や公共交通を〝ひとつの移動サービス〟とみなして、消費者が〝ひとつのアカウント〟で管理できるようになる。
独ローランド・ベルガーの予測では、カーシェアリングサービス、配車サービスといった新たなモビリティサービスの総移動量は、25年までに世界中の総移動量の6%にあたる1兆4000億人キロまで拡大する。
また、米ボストン・コンサルティング・グループの予測では、自動車業界全体の営業利益は17年の2260億ドルから35年に3800億ドルと約1・7倍に拡大する。ただ、その伸びをけん引するのは、シェアリングサービスやデータ活用サービスといったMaaSを中心とした「新規事業」がほとんどを占め、エンジン車販売といった「既存事業」は伸び悩むと予測される。
Uberが発表した
交通機関統合の計画
こうした産業構造の変化に伴い、米国でもMaaSの動きは活発化している。
配車サービス大手の米Uberは今年4月、同社のアプリからクルマだけでなく、自転車シェアリング、カーシェアリング、バスや電車などの公共交通機関といった交通手段を統合する計画を発表した。都市との長期的な「真のパートナー」になるために、交通パターン等のデータを各自治体担当者にシェアする予定だ。
また、電動自転車のシェアリングサービスを手がける米JUMP Bikesも買収し、サンフランシスコでは「Uber Rent」という名前で、提携したカーシェアリングサービス「Getaround」の車を借りることもできる。
さらにUberは公共交通機関との連携も深めている。同社は、ユーザーがアプリから乗車券を購入できるようにするため、ロンドンのモバイル発券企業Masabiとの契約を結んだ。Masabiによるモバイル発券技術は、ニューヨークのMTA、ボストンのMBTA、英国のNational Express Bus、ラスベガスのRTC、ロサンゼルスのMetrolinkなど世界の30以上の輸送機関と運営業者によって現在使用されている。