欧州ソフトウェア最大手・独SAPもMaaSを入り口にモビリティ業界への参入を狙っている。
シリコンバレー拠点で、同社のMaaS事業を統括するティモ・ステルツァー氏は、「プラットフォーマーやサービサーは、現段階で誰が覇者になるか予測はできない。誰が勝者になるにしても、SAPのシステムが中央にあることで、個々のサービスを通信でつなげることができる」と語る。
SAPは元々、インターネット経由でソフトウェアを利用するSaaS分野で成長した。そのビジネスで培ったノウハウでプラットフォームのインフラを担おうとしている。
国内最大の自動車部品メーカーであるデンソーもまた、MaaSに関連した技術開発を推進している。同社がCESで発表したMaaSプラットフォームでは、自動車メーカーや移動サービスを手掛ける企業向けに、車両情報を一元管理して共有するクラウド技術や、AIなどの情報解析、車載エッジコンピューティングなどの開発を推進するとしている。
このMaaSプラットフォームには、車外通信、車載でのデータ解析を担う「モビリティIoTコア」が含まれる。収集したデータでモビリティの需給の組み合わせといったビッグデータの解析を行って、MaaS事業者に提供することを目指している。
このようにMaaSが活性化していく中で完成車メーカーには何が求められるだろうか。
今後、サービスの内容は細分化する。地域ごと、利用事業者ごとに異なるサービスが求められていき、もし自動車メーカーがそれに応えるならば、自動車の性能や形状が細分化されていく。効率よくモノを作る大量生産による、従来型の自動車メーカーのままではいられない。
単なる完成車メーカーでは利益は望めなくなり、ニーズに対応できる部品メーカーに付加価値が移るとまで言われる。裏を返せば、MaaSへの変化に対応できる企業こそが生き残れるのだ。
■移動革命 自動運転時代の支配者は誰だ
野辺継男、川端由美、Wedge編集部
PART 1 無人運転タクシーの登場で モビリティの稼ぎ方は新時代へ
PART 2 移動はMaaSで一括手配 金のなる木に群がる企業
COLUMN 中国富裕層好みの自動運転用EVをつくるBYTON
INTERVIEW TOYOTAが移動革命に持つ危機感
・車を売るだけのビジネスには1マイルあたり1セントの対価しかもらえない
――ギル・プラット(トヨタ・リサーチ・インスティテュートCEO)
・ 国内ではトヨタ自身でモビリティサービスを提供するつもりだ
――友山茂樹 (トヨタ自動車副社長)
PART 3 IT、鉄道、自動車……誰が日本の移動を制するのか
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