2024年12月12日(木)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2018年10月25日

オカシオ・コルテツ選対で電話を支持者に入れるボランティアの運動員(筆者撮影@ニューヨーク市ブロンクス区)

 今回のテーマは「オカシオ・コルテツ陣営の地上戦」です。米東部ニューヨーク州第14選挙区(ニューヨーク市東部ブロンクス区・北西部クイーンズ区)のアレキサンドリア・オカシオ・コルテツ候補(29)に全米から注目が集まっています。というのは、「ニューヨークに誕生した民主社会主義の女神を直撃取材」で紹介しましたが、11月6日の中間選挙で米国史上最年少の連邦下院議員が誕生することが確実だからです。野党民主党のオカシオ・コルテツ候補は「女性、ヒスパニック系、民主社会主義者」です。

 研究の一環としてオカシオ・コルテツ陣営に入りましたので、本稿では同陣営の地上戦を紹介しましょう。

オカシオ・コルテツ選対までの道のり

 ボランティアの運動員として同陣営に参加するために10月14日、9月に続き再度渡米しました。ニューヨーク市グランド・セントラル駅から地下鉄6番線に乗り、同駅から25番目の「ウエストチェスター・スクエア/イースト・トレモント・アベニュー」駅で下車し、3分ほど歩くと同候補のブロンクス区の事務所があります。

 私事で恐縮ですが、筆者は1980年代にニューヨークに留学をしていました。当時、このあたりは決して足を踏み入れてはいけない地域であり、今でもその印象が強く残っています。

 ニューヨーク到着後、即座にホテルのチェックインを済ませ、眠気と緊張感の戦いの中で事務所に向かいました。とにかく地下鉄の中で居眠りをしないように注意をして、25番目の駅まで1つ1つ駅名を確認していきました。

 地下鉄が途中駅から地上に出ると、街の至る所に落書きがみられ、しかも各駅のホームには非常用ボタンが設置されていました。オカシオ・コルテツ候補のブロンクス区の事務所は、決して治安の良い地域にあるとはいえませんでした。

コネなしで潜入

オカシオ・コルテツ候補の母親の出身地プエルトリコの国旗:右下(筆者撮影@ニューヨーク州ブロンクス区)

 米国の選挙には、テレビ広告及びソーシャルメディアを駆使した「空中戦」と、有権者登録を促す運動、戸別訪問、電話による支持要請並びにボランティアの勧誘を含めた「地上戦」があります。ネットを通じて戸別訪問を行うボランティアの運動員を募集するので、両者は補完的な関係にあるといえます。

 オカシオ・コルテツ選対では、ボランティアの運動員が電話による支持要請とボランティアの勧誘の2チームに分かれ、名簿にリストされた有権者に電話を入れていました。筆者が選対で働いている運動員に挨拶をすると、早速ボランティアのリーダー格であるキース・コリンズさん(58)がメモ用紙に英語でスクリプト(台本)を書いてくれました。

 「私の名前はモトオ・ウンノです。オカシオ・コルテツ陣営でボランティアの運動をするために、東京からブロンクスに決ました。あたなたもオカシオ・コルテツ陣営で土曜日と日曜日にボランティアをしてみませんか」

 コリンズさんの職業は感染症専門医です。ヒスパニック系(中南米系)のボランティアが多数派のオカシオ・コルテツ選対では、白人男性のコリンズさんは少数派でした。

 「東京から来た点を強調するといい。クイーンズ区とブロンクス区の選対の住所も忘れずに有権者に伝えてくれ」

 コリンズさんの指示に従って、標的となっている有権者に電話を入れると、他の運動員が耳を澄まして筆者と有権者の会話を聞いているのが分かりました。日本人のボランティアが本当に電話による勧誘ができるのか疑っていたのでしょう。

 確かに、電話による勧誘はフェイス・トゥー・フェイスで説得を行う戸別訪問と比較するとハードルが高いのですが、米大統領選挙でオバマ・クリントン両陣営に参加した筆者にとって、有権者とコミュニケーションをとることはまったく苦ではありませんでした。


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