地元学生と戸別訪問へ
5人の有権者に電話を入れ、うち1名がボランティアに興味を示し、3名が不在、1名が勧誘を「拒否」をしました。この時点ですっかり日が落ちていたのですが、自ら手を挙げてメキシコ系米国人の男子学生と戸別訪問に出かけることにしました。地元の学生と一緒に訪問すれば、安全だと判断したからです。
彼はフォーダム大学3年生で、政治家を志望しており、民主社会主義の支持者でした。オカシオ・コルテツ候補や同候補のメンター(師)であるバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)は民主社会主義者で、国民皆保険、公立大学の授業料無償化を訴え、資本主義に否定的な態度を示しています。このメキシコ系米国人学生も、オカシオ・コルテツ候補と意見が一致していました。
「資本主義では貧困層は一生懸命働いても貧困層なんだ。だから民主社会主義を支持するんだ」
彼はオカシオ選対に参加した主たる理由を語ってくれました。
米国社会では、「生まれた地域の郵便番号(ジップコード)で人生が決まる」といわれています。貧困層の地域で生まれると、大抵の人は死亡するまで貧困層から抜け出せないというのです。
結局、オカシオ・コルテツ陣営が標的としている有権者の家を20軒訪問しました。うち9人がオカシオ・コルテツ支持を表明し、11名が不在ないし明確な意思表示をしませんでした。
「ヒスパニック系の候補なら誰にでも投票するよ」
訪問したヒスパニック系のある労働者がこう語った後で、英語とスペイン語の2カ国語で印刷されたオカシオ・コルテツ候補のパンフレットを人目に付くように郵便入れの上に置いてくれました。
庶民のパワー
翌15日、オカシオ・コルテツ候補がカジュアルな恰好で、笑顔を浮かべながら選対に現れ、戸別訪問に出かける約30名のボランティアの運動員を激励しました。
「中間選挙で勝つことが確実なのに、どうして戸別訪問を行うのか、質問をしてくる人がいます。私たちの目的は勝利ではありません。人々にパワー(力)を与え、コミュニティを作っていくことです」
オカシオ・コルテツ候補は、エスタブリッシュメント(既存の支配層)から庶民にパワーを移行することの重要性を繰り返し強調しました。
さらに、同候補は自分の戸別訪問の体験について語りました。
「ウエイターの仕事が終わると、私はレジ袋に入ったパンフレットを持って、コミュニティを回りました。5軒訪問して、たとえ4軒が不在であっても、1人の有権者の声に耳を傾けてじっくり聞きました。そうやって人間関係を作っていったのです」
続けて、こう述べました。
「今起きている運動の勢いを止めてはいけません」
運動とは前で触れた民主社会主義を指しています。
ドナルド・トランプ米大統領は中間選挙で民主党が勝利すると、米国が社会主義国であるベネズエラのようになると支持基盤に警告を発しています。トランプ大統領にとって、民主党内における民主社会主義の台頭は、冷戦時代を経験し、社会主義を否定する中高年の支持基盤を強化するために、都合の良い材料になっています。同時に、若者の支持を獲得することができない同大統領にとって、若者が賛同する民主社会主義の候補は脅威であることも事実です。