中東を読み解く

2018年10月27日

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軟着陸はできるのか

 サウジがいま行っているのは時間稼ぎにすぎない。しかし、時間が過ぎれば、トルコや米国、そして国際社会が事件を忘れてくれると考えるのはご都合主義というものだろう。ではどうやって事件を収めるつもりなのか。

 サウジの絶対に守らなければならない一線はムハンマド皇太子を事件とは無関係な存在に置くことだ。その一線を超えない形でトルコと米国が矛を収めてくれる「軟着陸方式」を見つけることができるかどうかだ。トルコは「地位に関係なく首謀者を明らかにせよ」と要求しており、18人の実行犯だけに責任を押し付けて済ませることはもはやできまい。

 となると、考えられるのは「皇太子の側近中の側近で、解任されたカハタニ王室顧問を“黒幕”とし、顧問に一切の責任をかぶせる以外にないのではないか」(同筋)。同氏は王室顧問を解任されたものの、サイバーセキュリティの責任者の地位は残されているといわれる。

 一部報道によると、カショギ氏が領事館に入った際、ネット電話でカハタニ氏と激しい応酬となり、現場の実行犯に対し「その犬の首を持ってこい」と命令、事実上の殺害を指示したという。トルコ側はこの電話のやり取りの録音を持っている可能性がある。

 だが、そうであっても皇太子と事件を結び付ける直接的な証拠は今のところなく、カハタニ氏が皇太子の命令を受けていたことを証明するのは難しいだろう。トルコ、トランプ政権とも事件がいたずらに長期化することを望んではいない。結局のところ、軟着陸に持っていけるかどうかは、サウジが「カハタニ首謀説」をどううまく根回しし、公表するかにかかっている。

 サウジは事件当初、国王特使としてメッカ州知事のハリド王子をトルコに派遣し、経済援助などをパッケージにした解決案をエルドアン大統領に示したとされる。大統領はこの時は提案を拒否したという。サウジ側は「カハタニ首謀説」とともに、経済援助の大幅増額、トルコが要求するカタールへの封じ込め解除などをあらためて提案すると見られ、水面下の動きから目が離せない。

  
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