東日本大震災発生後の日本政治の混乱ぶりについて、中国の保守派知識人の間では「日本の民主主義体制の欠点を露呈した」との受け止め方が広がっている。民主化に消極的な保守派は「共産党独裁の方が中国の国情にふさわしい」と確信した様子だ。しかし、一方で、社会矛盾を解決するためには民主化が不可欠だと考える改革派の知識人も少なくない。彼らは「日本がしっかりしてくれないと、保守派が勢いづき、中国の民主化の足を引っ張りかねない」と嘆いている。
菅首相のような思いつき発言は中国を乱す?
中日友好協会の招きで7月6日~10日の日本ジャーナリスト訪中団に参加し、北京の中国社会科学院日本研究所と懇談を行った。
中国側からは「日本の外交」「大震災後の政局」「原子力政策の行方」「メディアの菅降ろし」について突っ込んだ質問が相次ぎ、民主党政権の対米、対中外交のぶれや、大震災後の迷走ぶりが俎上に上った。
「だからこそ、中国は独自の政治体制を選択しているのです」。日本研究所の李薇所長は、思わず本音がこぼれでたかのようにつぶやいた。
「中国も政治体制改革は必ずやるが、このような大国が複雑な状況の中で改革を行うには周到な準備が必要だ。鄧小平思想に照らしても、中国が一番恐れるのは混乱だ」。李所長は政治体制改革の必要性を認めながらも、国内の安定を第一に慎重に進めるべきだとの考えを示した。
「菅首相のように思ったことをすぐに言えば、中国は乱れる。国民の利益にならない。日本は今非常に構造的な問題を抱えている。日本は豊かになってから、この乱れが現れた。中国はまだ豊かになっていない。1人当たりの国内総生産(GDP)は日本の10分の1しかない」。李所長は日中両国の発展段階の違いを強調した。
李所長は「今国民にとって大切なのは格差是正、社会保障の整備だ。もう少し豊かにならないと、政治体制改革に耐えられない」と述べ、「民主」より「民生」(国民生活)の向上を優先する現在の指導部方針を支持した。
「開発独裁」の剛腕によって成し遂げた復興
中国側の勧めにより、2008年5月に発生した四川大地震の被災地を取材した。マグニチュード8.0を記録した大地震では8万7000人を上回る犠牲者が出た。
中国政府は総額約9000億元(約11兆5000億円)を投入して復興に当たり、発生から3年間で計画の94%を完成させ、共産党政権は業績を誇示した。被災地と経済先進地域を1対1でペアリングし、先進地域に支援を義務付け、復興を加速させた。
訪中団が取材した四川省綿陽市北川県(少数民族チャン族自治県)の復興ぶりは、表から見る限り素晴らしい。同県の山間の市街地は壊滅し、住民3万5000人のうち4割の1万4000人が犠牲になった。同県は危険な市街地を完全に放棄し、離れた安全な平地にニュータウンを建設した。