2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年8月1日

 鉄道省は転落した車両を現場の地中に埋めて運行再開を急ぎ「証拠隠滅」との批判が噴出した。北京大学法学部の賀衛方教授は「全人代常務委員会が特別委員会を設立し、公正中立な立場から事故原因の究明を進めるべきだ」との考えを自らのブログで発表。官製メディアの北京晩報が賀氏をインタビューするなど大いに注目を集めた。

 賀氏は、鉄道省自らの事故調査について「信用できない。誤りを犯した人に誤りの所在を調査させ、責任を認めさせるというのは、人間性に符合しない」と述べ、第3者機関による調査の必要性を主張した。

 賀氏は、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏らが起草した民主化プラン「〇八憲章」にも署名した筋金入りの民主派。署名後は新疆ウイグル自治区の地方大学に一時左遷されたが、今年初めに北京大学に戻り、ブログや講演で活発な言論活動を再開している。

 中国の保守派は、日本政界のドタバタ劇を尻目にしながら、中国の安定維持と政治改革の先送りを決め込む。しかし、中国の庶民の間には、貧富の格差や官僚腐敗、インフレ、就職難など数々の不満がうずまく。X氏や賀教授のように「開発独裁」の高圧的な手法に限界を感じ、民主的なやり方を導入すべきだと主張する人たちの発言も増えている。中国の政治体制改革の行方は、なお予断を許せない。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
※8月より、新たに以下の4名の執筆者に加わっていただきました。
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学准教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜


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