2024年4月17日(水)

世界の記述

2018年11月6日

金融以外の成長エンジンを模索する香港

 経済に関しては「香港経済を多角化させたい。イノベーション、テクノロジー、クリエイティブに関連する事業に力を入れている」と述べ、シンポジウムの後の分科会では「中国・アセアン市場とその攻略法」、「スマートシティのABCD-AI、ブロックチェーン、クラウド、データ」、「スマートファイナンスとスマートリビングでアジアの力を強化」、「ヘルシーエイジング技術の最新動向」、「中国が描く金融成長戦略とその展望」、「日本企業のための法的リスク管理」、「快適な暮らしを彩る空間づくりとデザイン」の7つがテーマとなった。

 その分科会では、実際に香港に進出して成功した丸亀製麺などを運営するトリドールホールディングスの粟田貴也社長、良品計画の鈴木啓取締役、日立遠東の中江隆比古総経理などが、どのようにして香港ビジネスを展開していったのかを説明した。

 香港は、天然資源に乏しい上、製造業は中国、東南アジアがその役割を担っており、サービス産業しか選択肢がない。金融セクターや貿易のハブだけではなく、前述のクリエイティブ関連産業などの新しい成長エンジンを生みださなければ香港経済が尻すぼみになるため、香港政府は新産業の創造に必死だ。

 一方で、中国本土との経済の一体化がCEPA締結後どんどん進み、今ではグレーターベイエリアという構想まで生まれ、香港と中国を結ぶ高速鉄道も開通し、香港とマカオ、珠海を結ぶ港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge)も完成するなど中国経済との一体化がさらに進む。一帯一路にも積極的に関与することで経済を成長させようともしており、取り込まれるのではなく、中国をうまく利用して自分たちの経済を拡大させようという考えも垣間見える。

 新産業の創造と中国経済との一体化という2つの方法で経済成長を目指すやり方は、「二兎を追うものは一兎も得ず」になるのか、大谷翔平の二刀流のように成功するのか…そう遠からず答えが出るだろう。

  
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