11月6日に行われた米国の中間選挙では、共和党が下院での過半数を失ったが、上院では議席を伸ばし、知事選でも共和党が数を減らしたものの全米50州の過半数を維持した。
今回の選挙結果については、膨大な数の分析や論説・社説が出ているが、ワシントン・ポスト紙に11月7日付けで掲載された同紙コラムニストの論説のタイトル‘Democrats won the House, but Trump won the election’ (民主党は下院を勝ち取ったが選挙に勝ったのはトランプ)が、最も端的に言い表しているように思われる。同論説の「大体において、怒れる左派は拒否され、トランプが報われたのである」との結論は正しい観察であるように思われる。トランプは、選挙を受けた演説の中で、上院の議席増と下院の予想外の健闘を誇ったが、あながち誇張とも言えない。
例えば、オバマの一期目の中間選挙と比較してみると、この時はオバマの与党民主党は両院で議席を減らした。上院で6議席、下院で63議席を失っている。今回、共和党は上院を死守し、少なくとも2議席を上積みするらしい。下院では共和党は30程度の議席を失い過半数を失うことになったが、歴史的なパターンから外れているわけではないようである。
共和党が人事承認権を持つ上院の過半数を維持したことは重要である。また、知事選でもカギとなる州を押さえている(例えば、接戦のため再集計による混乱があり得るものの、フロリダ州)。州政府には、選挙区割りをする権限があり、選挙における再集計に関する権限もある。2020年の選挙に向けて、トランプは上院と知事選を重視する戦略をとった。それは、トランプの応援演説の行き先からも分かる。そして、トランプは、中間層のための減税を示唆したり、中国との貿易戦争に目途をつける意図があるようなことを言ったり、石油価格の高騰を抑えるために対イラン制裁に8つの国と地域に猶予を与える決定をしたり、あるいはメキシコ国境に向かう移民の行進を侵略といい立て軍の部隊を派遣したりと、恰も選挙戦だけのためにホワイトハウスがあるかのような行動を取り、激しく応援演説をして回った。