2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月22日

 メディアでは民主党が下院の主導権を奪回したことの意義が強調されている。すなわち、米国の民主主義の健全性を示した、憲法が規定するチェック・アンド・バランスが働いた、これによってトランプの政策の行き過ぎを阻止出来る、トランプの胡散臭い疑惑に対する調査・監視機能が強化される、などと言った主張である。しかし、これは過大評価のように響く。確かに、過去2年間、両院を共和党が支配する議会がトランプの前に殆どなす術を知らず、無力の存在であったことを考えれば改善が期待できる。しかし、せいぜい政策の停滞にとどまり、トランプに政策の転換を強いるまでには至らないように思われる。トランプには大統領令など、議会を迂回する方策もある。大衆動員で議会に対峙する手法もあろう。民主党が弾劾訴追権限を持つ下院で過半数を獲得したため弾劾訴追に持ち込むことは可能だが、判決を下す上院は共和党の手にあるので事実上不可能である。民主党は、トランプが進めるインフラ整備、保護主義的通商政策には、むしろ好意的である。ただ、2020年の大統領選が近づくにつれ、協調より対立色を出していかざるを得ないと思われる。いずれにせよ、対外政策の面では「米国第一主義」に対する抑制的な影響を期待することは出来ない。

 今回の選挙で米国の民主主義の健全性を感じることはなかった。むしろ、暗澹たる気持ちにさせられる。デマゴギーまがいの言説で人心が動くことの怖さがある。社会の分断は更に深まることになろう。他方、民主党はこのままでは駄目である。トランプに対抗出来る強力なメッセージを必要とする。反トランプだけでは次期大統領選には勝てない。前大統領のオバマを先頭に立てて選挙を戦わざるを得ないようでは勝てない。ジョー・バイデン(前副大統領)やバーニー・サンダース(2016年の有力大統領候補)でも勝てない。両者とも80歳になろうかという高齢である。トランプに対抗出来る強烈な個性の若い人材を発掘しないと勝てない。少なくとも現段階では、このままでは、2020年のトランプの再選が濃厚であると見通さざるを得ない。
                                      

  
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