世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年12月3日

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 EUによるもう一つの努力は「特別目的事業体(special purpose vehicle)」である。11月2日、モゲリーニEU外交安保上級代表と英独仏の外相・財務相は共同声明で、米国の第2弾の制裁復活を遺憾としたが、その中でイランとの金融のチャネルの維持とイランの石油・ガスの輸出の継続にコミットしており、そのためにロシア、中国とも協力して作業を進めると強い調子で述べている。具体的に検討されているのが「特別目的事業体」という仕組みである。これは、一方でイランからの輸入に伴い支払いを要する企業、他方でイランへの輸出に伴い支払いを受ける企業、両者の間で精算を可能とする仕組みを設ける、即ち、ドルを介することなく、EUとイランとの間で一種のバーター取引を可能とする仕組みを設けるというもののようである。イランのザリフ外相はこの仕組みに期待するような発言をしているが、その実現可能性、実現したとしてどの程度有効に機能するかは目下不明である。

 今後の問題は、イランが何時まで米国の制裁に耐え核合意を遵守することが出来るかにある。欧州にすら経済的利益を期待出来ないとなれば、イランが核合意を維持する意味はない。中国は米国に義理立てする必要はないであろうからある程度協力を当てに出来るであろう。ロシアはイランの石油を買って転売する仕組みをイランとの間に有しており、引き続き支援すると言っている。それでもイランの石油輸出は最近のピークの280万バレル/日の3分の1程度に落ちるという見通しもあるからイランは苦しい。追い詰められる。そういう状況で沈黙していることに政権は耐えられないとなれば、イランは核合意を離脱し核活動を再開するかも知れない。核合意で強化された査察体制を妨害し、核活動の実態は見えにくくなる。そうなった時、米国はどうやって始末をつける積りでいるのかは誰にも判らない。
 

  
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