Washington Files

2018年12月10日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

白人至上主義者

 テロ以外の白人至上主義者による個別の殺害事件も急増傾向にある。

 全米ユダヤ人差別監視組織として知られる「Anti-Defamation League」(略称ADL)のデータによると、2008年から2017年にかけて発生した殺害事件の犠牲者のうち、白人至上主義者による犯行が71%を占めた。これに対し、イスラム過激グループによるものは26%だった。これら白人による犯行件数は2013年当時の3倍以上にも激増しているという。

 ここ数年の白人至上主義者の犯行で全米の話題となった事件としては、2015年6月、南部サウスカロライナ州チャールストンの教会で、聖書研究に集う敬虔な黒人キリスト教信者たちに白人至上主義者の青年がけん銃を乱射、男女9人を射殺した惨事がある。この事件では、逮捕された青年はアメリカ社会における白人以外の存在を認めず、日頃からヒトラーを崇拝するほどの思想の持ち主だった。

 同様に昨年8月には、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者やネオ・ナチを唱導する極右グループが集会を開き、これらの不穏な動きを警戒する市民グループとの間で激しい衝突や小競り合いが起きる事件があった。その際、群衆の中に白人の乗った車が突入、市警察の発表によると、1人が死亡、最低35人が重軽傷を負う騒ぎとなり、同州のテリー・マコーリフ知事が「非常事態」宣言する事態に発展した。

 さらに今年に入り、10月、ペンシルバニア州ピッツバーグのユダヤ人教会で礼拝中だったユダヤ信者たちに向けて、乱入した白人至上主義者の男が「ユダヤ人ども、くたばれ!」などと叫びながら銃を乱射、中にいた信徒のうち最低11人が死亡、直後にかけつけた警官4人も銃弾を浴びるという、アメリカのユダヤ人を標的とした犯罪としては最悪のヘイト・クライムが発生した。

 警察の調べによると、逮捕された犯人ロバート・バウワーズ(46)はふだんから、白人至上主義者たちの支持するウェブサイト「Gab」(後に閉鎖)を通じて、ユダヤ人を誹謗・中傷する書き込みをしていたほか、最近では、全米でも大きな話題となったホンジュラスからアメリカをめざす「移住集団」についても敵意をむき出しにしていたという。

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